第31章 ふたりの、初めて。 その8
「宗介さん、そっち寒くないですか?」
「いや、大丈夫だ」
あの後、俺達はソファーに座ってとりとめもないことを話したり、順番に風呂に入ったりとのんびりした時間を過ごした。そして、そろそろ寝ようかということになり、俺達は今ヒカリの部屋にいる。
さすがにシングルのベッドに二人で寝るのは狭い、ということで、ヒカリがベッドのすぐ横に布団を敷いてくれて、俺はそこに寝ることになった。
「・・・あの、宗介さん。もう寝ちゃいました?」
電気を消して、10分ぐらい経った頃だろうか。小さな声でヒカリが聞いてきた。一日中色々あってなんとなく身体は疲れてるものの、やはり今日のヒカリとのこととか、隣に寝てるヒカリのことが気になって、目が冴えていた俺はすぐに返事をした。
「いや、まだ起きてる。どうした?」
「あの・・・あのですね・・・えっと・・・」
理由はよくわからないが、なぜかもじもじと言いづらそうなヒカリ。その様子が気になったので、俺は起き上がってヒカリの方に顔を向けた。
「なんだよ。腹でもへったのか?」
「ち、違います!!」
「だったらどうした?」
「え、えっと・・・その・・・や、やっぱりさみしいので・・・宗介さんの方、行ってもいいですか?」
暗闇に慣れた目に、恥ずかしそうに毛布で顔を隠すヒカリの姿が映った。
「・・・・・・はっ!」
「だ、だって・・・ふわぁっ!!」
・・・・・・ほんっとこいつはしょうがねえな。
小さく息を吐くと、俺は布団から起き上がってベッドの中に入った。そのままヒカリを自分の胸に抱き寄せる。
「あ、あの・・・そ、宗介さん?」
「・・・お前、ほんっと甘ったれだよな」
「ち、違います!・・・あ・・・う〜・・・や、やっぱり違いません・・・」
「はっ!なんだよ、それ」
からかうようにそう言ってやると、ヒカリはまた、なんだかおかしな言い方をしてきて、噴き出してしまう。
こいつといる時、俺はいつも笑ってるような気がする。普段はそこまで声出して笑う方でもないのに。
だけど仕方ない。ヒカリのよくわかんないことに必死になってる姿とか、真っ赤になってる顔とか弾けるような笑顔を見てると、俺も自然に笑顔になっちまうんだから。