第31章 ふたりの、初めて。 その8
「あの・・・宗介さんがこんな素敵なものをプレゼントしてくれたのに、私、風邪ひいてたせいでまだ用意出来てなくて・・・」
さっきまで嬉しそうだったヒカリの表情が少しだけ曇る。だけど、マフラーは大事そうに胸に抱えたままだった。
「えっと・・・私からのプレゼントはもう少し待っててもらえますか?」
「いい。いらねえよ、そんなの」
「え?で、でも・・・」
ヒカリの言葉を遮るようにそう言うと、ヒカリは戸惑う表情を見せる。
・・・ああ、こんなこと口に出して言いたくない。だけど言わなきゃ伝わんねえし、俺の本心だからどうしてもヒカリに伝えておきたかった。
「もう・・・貰ったから。俺が一番欲しかったものは・・・」
「っっっ・・・!!!!!」
こいつ鈍いしわかんねえかな、なんて不安もあったけど、ちゃんとその意味がわかったようで、ヒカリは一気に頬を真っ赤に染めた。ガキだガキだと思ってたけど、少しは色々わかるようになったな、なんてそんなことが思い浮かぶ。その自分の考えと、ヒカリの赤くなった頬に思わず口元が緩んでしまう。
「・・・っは!」
「わ、笑わないで下さいよ!もう、いつもいつも!!」
「はっ!わりぃ・・・でもお前のここ、また真っ赤だから・・・」
「っん!」
そっとヒカリの頬に触れると、もう限界まで赤くなってると思ってたヒカリの頬が更に赤くなった。その様子がおかしくて、もっとヒカリを怒らせるとわかっていても噴き出してしまう。
「ぶはっ!っははははっ!!」
「も、もう・・・う〜、ばかぁ・・・宗介さんのいじわる・・・」
赤くなった頬を隠すようにヒカリが俺の胸に頭を預けてきた。そんなヒカリにまた愛おしさが込み上げて、そっとその柔らかな髪に口付けた。