第31章 ふたりの、初めて。 その8
食事を終え、二人で洗い物をした後、俺とヒカリはソファーに座ってぼんやりとテレビを眺めていた。
今日がクリスマスイヴだからか、各地のイルミネーションが特集されていて、それを家族やカップルで眺めている姿がテレビには映しだされていた。
「綺麗、ですね・・・」
「そうだな」
「あの・・・よくよく考えたら、ちゃんとデートした後でも十分でしたよね、うちに誘うの・・・えっと、なんかすいません・・・私、とにかくうちに誘わなきゃって、そのことで頭いっぱいになっちゃって・・・」
ヒカリが俺の方を見て、申し訳無さそうな顔で言ってきた。別に俺はそれで構わなかったが、イルミネーションを見に行く予定も立ててたし、テレビを見ている内に、色々と思うこともあったんだろう。
気にするな、そう言って頭を撫でてやるつもりだった。最初は。だけど、さっきこいつに恥ずかしいことを聞かれたのを思い出して、俺は少し仕返ししてやることにした。
「はっ・・・なんだよ、お前。そんなに早く俺としたかったのか?」
からかうようにそう言ってやれば、ヒカリはいつもみたいに真っ赤になってあたふたしたり、『そんなこと聞かないで下さい』とか言って怒り出すと思ってた。だけど、俺の予想はあっさりと裏切られた。
「は、はい・・・だ、だって今日会ってキスしてもらった時から、宗介さんのこと大好きって気持ちが止まらなくなっちゃって・・・だから・・・どうしても、は、早くしたかったんです・・・宗介さんと・・・」
真っ赤に染まった頬と潤んだ瞳で俺を見つめてくるヒカリ。鼓動が一気に跳ね上がる。
「っ・・・う・・・あ・・・」
・・・やばい。言葉が出てこない。
「・・・宗介さん?」
小首を傾げて俺を見上げてくるヒカリ。体格的にそうなるのは当たり前だが、こいつの上目遣いは相当やばい。
「あ・・・あー、あれだ・・・まだ早いし、お前の身体が平気なら、今からイルミネーション見に行くか?」
視線を彷徨わせると、テレビには変わらずイルミネーションが映しだされていて、近くの時計を確認すればまだ十分に早い時間だった。
・・・それにこうして家の中に二人きりでいると、また歯止めが効かなくなってしまいそうだった。