第30章 ふたりの、初めて。 その7 ※
「ん・・・・・・」
目が覚めて一番に感じたのは、気だるさだった。少し身体を動かすと、気だるさと共に痛みがやって来た。だけど、全然いやな感じではなくって。それは、身体の奥の方に残る甘い甘い痛み。
そして、なぜだかわからないけれど、泣きたくなるぐらいに幸せなあたたかさが胸いっぱいに溢れていた。
「ヒカリ・・・目、覚めたか?」
・・・宗介さんの声がする。どうして、宗介さんがここにいるんだろう。ここ、私の部屋のベッドだから宗介さんがいるはずないのに・・・
「へ?・・・・・・宗介さん・・・?・・・・・・」
少しずつ意識がはっきりとしてきて、重たかった瞼が開いていく。
「・・・・・・・・・!!!!!」
目の前に、宗介さんの顔と、何も身に付けてない上半身があって、一瞬にして私はさっきまでのことを思い出した。
「っっ・・・あ・・・あ、あのっ・・・お、おはようございます!!!」
「・・・おう・・・おはよ・・・はっ!まだ夕方だけどな」
かーっと一気に顔が熱くなって、パニックになってしまう。そうだ、目が覚めたんだから挨拶しなきゃ、なんて慌てておはようの挨拶をして、宗介さんに笑われてしまった。
「へ?!・・・あ!ああ・・・そ、そうですよね。まだ夕方ですよね、あはは・・・・・・」
宗介さんに言われて気付いたけど、部屋の中がさっきに比べて暗くなっている。それに、どれだけ私が眠ってしまっていたとしても朝になることなんてないだろう。笑ってごまかしてみるけれど、顔は熱くなっていくばかりで。そして、宗介さんの顔を見るのが恥ずかしくて仕方なくって、必死に私は視線をそらしていた。
「・・・ヒカリ」
「っん・・・!」
だけど、そんな私を宗介さんの力強い腕が引き寄せる。ぎゅーっと強く、でも優しく胸に抱き寄せられて、宗介さんのあたたかさとゆっくりとした鼓動を感じる。
「・・・寒くねえか?」
「は、はい・・・」
宗介さんの優しい声がすぐ近くで聞こえて、心が落ち着いていく。触れ合う素肌が心地よくて、宗介さんの胸に頬を擦り寄せた。