第27章 ふたりの、初めて。 その4
「へ?!・・・っきゃあっ!!」
突然身体が浮き上がったのだから、ヒカリが驚くのも無理はない。悲鳴をあげて俺の首にしがみついてくるヒカリを両腕でしっかりと支える。
「そ、すけさ・・・お、降ろして!・・・怖いし、重いから・・・っ!」
「大丈夫だ、ちゃんと捕まっとけ。それに、お前重くねえから」
俺の首筋に顔を埋めるヒカリの耳元でそう言ってやると、ヒカリは何も言わずにしがみつく腕に力を込めてきた。そのまますぐ近くのベッドまでヒカリを運ぶ。
「ん・・・」
そっとヒカリをベッドに寝かせると小さく軋む音がした。
「あ、あのっ!・・・あ、あの・・・そ、宗介、さん・・・」
急な展開についていけないのか、ヒカリの手はその胸の前で落ち着きなく動いている。そんなヒカリの上に覆いかぶさると、今度は大きくベッドが軋んだ。
少し強引だったかもしれない。もっとゆっくりヒカリを驚かせないようにするやり方だってあったかもしれない。だけど、今の俺にはこれが限界だった。
「・・・もう待ってやれねえぞ」
「っ・・・!」
ヒカリの目を見つめて、はっきりとそう伝えた。ヒカリの目が大きく見開かれた。
「・・・抱きてえ」
ずっと思っていたこと。あの時も、あの時も・・・あの時も。いやそれ以外の時だってずっと思っていたこと。だけど今まで一度も口にしなかったことを初めて言葉にした。
「っっ・・・!・・・そうすけ、さん・・・」
まるで泣き出す前みたいにヒカリの瞳が大きく大きく揺れ動いた。俺の名前を呼ぶヒカリの声が、微かに震えているのがわかった。だけど、一度ぎゅっと強く目を閉じると、もうその瞳はまっすぐに俺のことを見つめ返してきていた。
「・・・はい・・・・・・『続き』、してください・・・」
あの日、文化祭の日からずっと待ち続けたヒカリの言葉を受け止めると、俺は再びヒカリの唇をふさいだ。