第24章 ふたりの、初めて。 その1
ちょっとショックだけれど、こんなことは慣れっこだ。それに、私の存在に気付かなかったなら、今まで私達がしてたことも見られていないことになる。さっきは思わずドキッとしたけれど、安心した。
「へ〜〜!ヒカリちゃん、今日服装も髪型もすっごく可愛いね!」
「へ?!あ、ありがとうございます・・・」
貴澄さんにまじまじと見つめられて『可愛い』なんて言われて、思わず声が上擦ってしまった。
「そっかー、今日イヴだもんね。あ!もしかして僕、すっごいお邪魔虫だった?」
「・・・まあ、そういうことになるな」
不機嫌さを隠しもしない声で、宗介さんが言う。そこまではっきり言わなくてもいいんじゃ・・・なんて思ってしまう。
「あはは!相変わらずはっきり言うね、宗介は。それじゃあ、僕も買い物の続きあるし、またね!二人とも、デート楽しんできてね!」
だけど貴澄さんは慣れているのか、全く気にしないで明るい声でそう言うと、手を振りながら去って行ってしまった。私もぺこりと頭を下げて貴澄さんの後ろ姿を見送った。
・・・前も思ったけど本当に明るくて気さくな人だなあ。お友達って言うけど、宗介さんとは正反対な感じ。
こんな風に宗介さんのお友達に会えるのは、宗介さんの知らない一面を見れるみたいでちょっと嬉しい。だけど、今は・・・完全に誘うタイミングを逃しちゃった、よね?
・・・どうしよう・・・今から言ってもやっぱりダメだよね・・・なんて思いながら、横にいる宗介さんを見上げようとすると・・・・・・
「・・・・・・ちっ」
聞き間違いなんじゃないかと耳を疑ってしまうぐらいに、大きな舌打ちが聞こえてきた。
「そ、宗介さん?」
・・・宗介さん、ものすごく怒ってる?な、なんか宗介さんからどす黒いオーラが出ている気がする。そんなにさっき、邪魔されたのがイヤだったのかな、なんて思っていたら・・・
「・・・・・・あいつに先越された」
「・・・へ?」
いつの間にか宗介さんからどす黒いオーラが消えていた。その代わりに、宗介さんの頬がほんの少しだけ赤くなっている。