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飛行機雲 【暗殺教室】

第2章 はじめての時間



 険しい山道を越えた先に、本校舎から隔離されたE組の校舎がある。お世辞にも綺麗とは言えない見た目で一歩踏み入るのに躊躇われたが、空気はとても澄んでいた。
 ギシギシとなる廊下を進み教室へ入り、自分の席へと座る。一番後ろ、壁側から二番目。そこが私の席。
 登校しない私の元へ何度も訪れてくれた雪村先生が、にこにこしながらここが貴方の席よと教えてくれたのだった。
 座ってすぐに、複数の視線を感じた。E組が始まった二年の三月は一度も出席していなかったのに、三年になっていきなり出席したからきっと、見られていたんだと思う。
 でもその視線も直ぐに離れ、私もみんなも突如入室してきた剣呑さを纏うスーツの大人達と触手をにゅるにゅると動かす黄色い謎の生物に釘付けとなっていた。
 静まり返る教室。教壇へ上がった黄色い生物は、ぐるりと眺め回すと口を開いた。
「初めまして、私が月を爆った犯人です。来年には地球も爆る予定です。君達の担任になったのでどうぞよろしく」
 流暢に紡ぎ出される日本語を理解するのは難しかった。
 担任の先生代わっちゃったんだ、と私は的外れに考えた。
 雪村先生とは色々な話をしていた。いつも私の話を真剣に聞いてくれた。
 防衛省の烏間という人が国家機密だと言って何か話し始めたが、正直全然耳に入っていなかった。暗殺とか百億円とか、普通に生きていれば関わることのない言葉たち。
 そんな言葉たちの中で唯一脳裏でこだましていたのは、先生の言い放った『来年には地球も爆る』というもの。
 私は疑うでもなく嘆くでもなく、ただただ開放感を感じていた。
 先の見えていなかったトンネルに一筋の光が差し込んで、終わりが見えた気がした。後はその光に向かって、進んでいけばいいのだ。
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