第2章 はじめての時間
私は、
「優しくなんか……ない」
優しさじゃない。
渚くんのハンカチは、枝に引っかかっているものが何か気になっただけで、きっと、先生が来なかったらその場に置きっぱなしにしていた。
杉野くんの事だって、先生に良く思われたいから話に出しただけ。心配もしてないし、関心もない。自分の為。
だから優しさじゃない。
「先に戻ってる」
短く言って踵を返した。
後ろから二人の明るい声が聞こえてくる。
会話らしい会話はしてないけど、この日私は椚ヶ丘に入学してからはじめてクラスメイトと喋ってしまった。
不本意だったけど、悪い気はしなかったように思う。
この時の私は、先生の目にどう映っていたんだろう。