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飛行機雲 【暗殺教室】

第2章 はじめての時間


episode03.喋

 殺せんせー。
 カエデちゃんが先生に付けたあだ名。
 私は一度もそう呼んだことがなかった。
 E組に馴染むことなんてないと思ってた頃も、今も、なんとなく避けてきた。
 先生は何度かそのことを気にする素振りを見せていたけど……。
 本当の名前を、呼びたかった。

 *

 先生がニューヨークへスポーツ観戦しに行っている放課後、私達は防衛省の烏間さんに教室に残るよう命じられていた。
「どうだ、奴を殺す糸口はつかめそうか?」
 どんな話をされるのか予想はついていた。
 E組にいる限りは、私も殺し屋。E組を出れば、先生との関わりは無くっなってしまう。
 暗殺者と標的。そんな奇妙な絆で結ばれている先生と生徒達。
 出席番号すら無い、中途半端にE組に存在している私でも、ずっと暗殺に参加しない訳にはいかない。何で殺そうとしないんだ、なんて問い詰められたら大変だ。迷惑だけはかけなくなかった。
 先生が殺されてしまえば、私は救われない。
 殺されなければ救われるけど、先生は?
 地球を爆発した後で、先生はどうするんだろう。
 どうして爆発させようとしてるのかも、正体も知らない。
 先生のことは何も知らなかったけど、先生に対する想いは確実だった。
 はじめて好きになった相手は、卒業までに殺さなきゃダメな先生。
「奴は生かしておくには危険すぎる! この教室が奴を殺せる現在唯一の場所なのだ!」
 考え事をしていたら、烏間さんの話は終わっていた。
 烏間さんの言い草からして、先生が私の知らない所で誰かに殺されてしまう心配は要らないようだった。
「以上だ。皆、気をつけて帰るように」
 スーツの大人達が出ていって、教室は生徒だけになった。
 神妙な面持ちで帰り支度を始める面々は、何を思い何を考えているのだろう。殺して欲しくないけど私一人にどうこうする事は出来ないし、結局は我関せずな顔をして教室を出ていくしかなかった。

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