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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第2章 予感と覚悟と現実と


ユーリの感傷などお構いなしに、シーズンは進んでいく。
今季ユーリの初GPSは、地元ロシア大会からのスタートとなった。
昨シーズン覇者の今季初試合という事で、国内外から注目の的となっていたが、ヤコフによる「ユーリが本格的な成長期に入った為、今季は調整を中心としたトレーニングを行っている」という事前発表と、昨シーズン途中で現役復帰を表明したヴィクトルの久々のGPS参戦で、幾らかは取材の攻勢から逃れる事が出来た。
今季のユーリは、参加する2戦共勇利とGPSでバッティングしなかった。
そしてそんな勇利は、相も変わらずヴィクトルの傍で彼のスケートを一心に見つめている。
(こんなトコで油売ってねぇで、ピーテルで練習してろよバーカ)
心の中でそう毒突くものの、ユーリの中では例えようもない焦りと不安が押し寄せていた。
それは、単にこの試合への不安ではない。
体型変化による不調を覚えて以来、今季はそう上手くは行かないだろうとシーズン前から覚悟していたからだ。
しかし、そうした不調に喘ぐ自分を他所に『アイツ』はどんどん先へと行ってしまうのではないだろうか。
やはり自分の事など『アイツ』の眼中にはなく、所詮たまたま昨季のGPFで優勝できた次世代の選手としてしか見ていないのではないだろうか。
(サユリはあの時長谷津でああ言ってたけど、本当はただ俺を慰める為に…)
「試合も始まっていない内から、悲観的な事ばかり考えるのはおやめなさい」
その時、ユーリの思考をリリアの声が止めた。
「成長期の不調は、誰にでも起こり得る事。それを言い訳にしてはいけません」
「しねぇよ」
ぶっきらぼうに返しながらも、ユーリは努めて『アイツ』の事を考えないようにした。

結果は、SP・FS共にこれまでの最低記録を築く羽目になった。
感覚が狂ったアクセルジャンプは回転が足りず転倒、得意のサルコウでさえお手つきによる減点を食らった。
唯一、これまで苦手としていたステップではそこそこの評価を得られたが、シーズン2年目のGPS初戦は台乗りどころかポイント獲得圏内に滑り込むのがやっとだった。
「今季の崩れは仕方ないと割り切ってる。試合通じて徐々に慣らしていくしかない。それだけだ」
予め用意していたコメントを取材陣にすると、ユーリは優勝インタビューに応えているヴィクトルと、彼の隣にいる勇利を極力見ないように会場を後にした。
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