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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第2章 予感と覚悟と現実と


「ま、所詮昨シーズンのはビギナーズ・ラックだったんだな。シニアは成長期が始まってからが本番だし、低迷前に良い思いしただけでもめっけもんだったじゃないか」
「…もういっぺん言ってみろ」
軽口を叩いてきた相手を振り向きざま睨みつけたユーリだったが、ヤコフの怒声に舌打ちをするとその場を離れた。
正直腹立たしい事この上ないが現状では言い返せない自分が情けないし、第一このような不毛な争いをしている暇はないのだ。
そうした考え方自体充分成長した証でもあるのだが、焦りばかりが募るユーリには、それが気付けずにいた。

「何をあんなに思い詰めてるんだろう…?成長期の低迷は誰もが経験する事だし、ヤコフコーチとリリアさんならきっとベストの指導をしてくれるから、必要以上に心配する事なんかないのに」
「──まずは自分の事だよ、勇利。今、俺が話しているのちゃんと聞いてた?」
昨シーズンの途中で現役復帰をしたヴィクトルは、本来ならまず不可能と言われる選手とコーチという前代未聞な二足のわらじを履いている。
かつての長谷津のような状況とは違うヴィクトルの貴重なコーチの時間を思い出すと、勇利は頭を切り替えてレッスンに集中した。
ジャパンオープンでの演技の改善点と更なる技の精密さを言われた勇利は、ヴィクトルが見せた手本の後で自分も又滑り出す。
世界でも最高レベルと言われる勇利のステップを横目に、彼らから離れた所でユーリはそんな彼とは対照的に思うように動かない自分の足を、もどかしく思っていた。

練習終了後。
長谷津から食料その他の差し入れが届いたので、今宵は和食にしようと話し合ったヴィクトルと勇利は、更衣室にいたユーリを誘ったが、「栄養士から食事管理されてる」と断られた。
「カツ丼じゃない和食ならヘルシーだし、消化にも良いよ?何なら俺からその栄養士に話してあげるから、たまにはいいじゃない」
「余計なお世話だ!こっちはやんなきゃいけねぇ事が山積みなんだよ!お前らみたいにお気楽にやってる奴らと一緒にすんじゃねえ!」
「ユリオ…?」
勇利の驚きに見開かれた目に気付いたユーリは、「悪ぃ、言い過ぎた」と半ば2人から逃げるように更衣室を後にする。
訳が判らないとばかりに首を傾げるヴィクトルの隣で、勇利は僅かに表情を曇らせていた。
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