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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第3章 不安と焦りとパンドラの匣


「ねえ、」
「ん…えっ、ゆ、ユウリ・カツキ!?俺に何か用?」
勇利に声を掛けられたその青年は、些か緊張しながら返事をする。
「君は確か、ボリスコーチの生徒だよね?今夜はレッスンはないの?」
正直な所、勇利は青年ではなくそのボリスコーチのスケーティングと指導法に興味があるのだが、いつもはよく夜に彼のレッスンがあるのを知っていたので、それも含めて青年に尋ねた。
「コーチの急用で中止になったんだ。だから、今日はこれでおしまい」
「そう」
「あ、でも…今夜俺が貸し切ってたサブリンクは、今ユーリが使ってるよ。ホントは無断で名義貸ししちゃいけないんだけど、アイツに鬼気迫る勢いで頼まれたから…何か断れなくて」
続けられた青年の言葉に、勇利は顔色を変えた。

解けてきた髪を結び直す余裕もないまま、ユーリは荒い呼吸を繰り返す。
「何でだよ…俺の身体のクセに、何で俺の言う事聞いてくれねぇんだよ…!」
無理を言ってリンクの使用権を替わって貰ったユーリは、予約時間まで充分身体を休めてから練習に臨んだ筈だった。
なのに、ヤコフ達とリンクにいた時以上に、ユーリの手足は動かない。
もどかしい想いを氷にぶつけるように、ユーリは失敗ばかりでもう数えるのも嫌になる程のジャンプの体勢に入った。
しかし、最早ユーリの身体は持ち主の言う事を聞く力は残っておらず、空中でバランスを崩したユーリは、満足に受け身も取れないまま氷に叩きつけられそうになる。
「しま…っ!?」
衝撃を覚悟して身体を硬くさせたユーリだったが、刹那何か温かいものが全身を包むのを覚えた。

「──ユリオ!」
「ぇ…」

息を切らせながら自分を呼ぶ声に、ユーリは一瞬耳を疑った。
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