第2章 はじめましてと噛み合わない会話
セブルスにとっては、これが友好の証だ何て分かってるけど…やっぱり恥ずかしいし。ちょっと…気持ちいいと思ってしまう自分が、純粋な挨拶であるこの行為に対して、穢らわしいのだと。そんな風に思ってしまう。
「ならば、許可を取れば良いのか」
「今日はしないよ」
「ふ、…“今はそれでいい”」
ふわりと柔らかくなった彼の空気に驚いて、再び視線を逸らしてしまう。…心臓に悪いんだよ、その顔。
何度も何度も、言われた言葉。“今はそれでいい”と口にする度に、ほんの少しだけ遠くを見つめる様な仕草をする。恐らく、もう1人の私を思い出しているのだろう。
なんか…、んー。妬ける…?なぁ…。皆に愛されてる夏海さん。
「あ、セブルス。今日は?」
逸らした視線の先に鍋を見付けて、思い出した。
「ポリジュース薬だ」
「おっけ」
セブルスは時々、薬を作っている。
魔法薬学の先生なのだから当たり前だと思うけど。それでも、まだ新学期には早いこの時期から定期的に何かを作っていた。
魔法の練習の合間に調合を覗くようになるのは必然的で、そうなれば自然と教えてもらう様にもなっていく。
彼の教えはスパルタだけれど、素直に分からないと言えば、躓いている本質を素早く見抜き丁寧に説明しながらやって見せてくれた。
身体で覚えるタイプの私でも、ある程度のコツや情報はあるに越したことは無いので、非情にやりやすかったし理解もしやすかった。
余りに何事も無さそうに調合するので、元から薬草学が得意だったのかと、先日訊ねてみた。
意外にも答えはNOで元々興味があった所に、昔誰かに教えて貰ってから更にのめり込んで腕を上げて行ったらしい。
…それ、スラグホーン先生かな??
「知識は無いが、相変わらず手際が良い。」
「本当?よく言われるんだよね、身体で覚えるからレシピは覚えるのに時間かかるけど、技術はメキメキ上がるねって」
「そうだな」
材料を揃えるセブルスの反対で、教科書を追って器具を揃えていく。
「…あとは、虫嫌いを何とかしたまえ」
「いや…。なんて言うか体が拒否反応を…」
作り方やコツは粗方覚えて来た。これ迄セブルスが作った物なら出来る様になったし。…でも実のところ、鼠の尻尾とか生き物系の材料は全てセブルス任せだった。