第2章 はじめましてと噛み合わない会話
翌日。
あの後セブルスに「余計な事を考えるな」と見透かされ、叩かれた事を思い出しつつ、この蝙蝠の入れるホットラテを頂く。
「今日はマルキンさんの所だけでしょ?一人で行ってくるよ」
「………」
「え、ダメなの?」
「…いや」
それきりだんまりな蝙蝠に、今度は此方が溜息を吐く。
「なぁに?心配な事でもあるのかな、セブパパは」
「やめろ」
見事に臍を曲げた彼に、やれやれと溜息をついて口を開く。
「ごめんて、冗談だよ。…でもさ、いつまでも一緒に動く訳にはいかないでしょ?」
「お前は一人にすると、大抵何かに首を突っ込む」
「ちょ。何それ、どういう意味」
「そのままの意味だ」
今度は此方が臍を曲げる番。ムスッとしつつも、膝をかかえて考えてみるが…。心当たりしかなかった。不本意ながらね。
「……でも、セブルスだって仕事があるのに…。これじゃ何の為に昨日の夜、激痛を耐えたのかわかんないじゃん」
「…………はぁ。好きにしたまえ」
「…いいの?」
「元よりそのつもりだったのだろう」
「……怒ってる?」
「おこ…っ、てない」
「うわ、何それ絶対怒ってんじゃん!」
「騒がしい、喚くな。…どうせ言っても聞かないのだろう」
中々言い回し的には冷たいものがあるが、折れてくれた事に違いはないし。礼を言って早々に仕度を始めた。セブルスの雰囲気的に、本当に怒ってる訳では無さそうだしね。…たぶん。
歳の差はあるけれど、なんだか同級生と居るみたいで。それでも時折見せる彼の物言いだとか、頭の回転だとか。経験が物を言うそれ等に関せば、やはり目上の人間なのだと思い知らされる。
「セブルス、あの…。ごめんね?」
「謝る事では無いだろう。…無事に帰って来れば、それでいい。」
「っ」
無事で居ること。彼の元へ帰ること。セブルスが永遠に愛したリリーが叶えられなかったこの2つは、大きな傷を作り上げ。友人であろうもう1人の私にまでも、その恐怖が向けられている。
私なら、そんな辛い後悔は2度としたくない。私だったら、片時も離れたくは無い。…それでも彼は、そんな不安を押し殺して私を優先させてくれた。
そんな不器用過ぎる優しさが嬉しくて、切なくて。
思わず蝙蝠に飛び付いた。