第2章 はじめましてと噛み合わない会話
「やっぱり、聞いてみなくちゃ分かんないんだよねぇ」
本当はずっと、セブルスに強姦されかけたのだと思い込んでた。でも彼の口から出る真実は、最終的な目的は私の安否の確認だった訳だ。
勿論最初からでは無かったけど、そこはちゃんと反省していたし。魔が差す事って多かれ少なかれ、あると思うから。未遂で終わったし、セブルスが心配してくれるのも分かったからもういい。
「お前は…、どう思っている」
「?」
「怖かったのだろう。我輩を恐れたのであろう?…なのに何故、こうして居られる」
まぁ、普通はそう思うよね。私だって元の世界で何度も襲われかけて、その相手とは二度と会わない様にしてきた。
「この世界とハリーに関する出来事を、粗方知ってるって言ったよね?貴方のことも知ってる。そして私は、物語の中の貴方を心底…、愛しく思った。」
ピクリと揺れる肩を見詰めてクスリと笑いをもらし、構わず続ける。
「物語の貴方は目の前の貴方とは全然違った。けれど、こうして暮らしていく中で、貴方を嫌いになれる要素は1つも見付からないのよ。勿論、あの日の事も含めて」
「夏海」
「セブルスに出会えた事を、感謝する事はあっても、恨んだ事は1度も無いよ。」
ゆっくりと歩み寄って、デスクに向い、座ったままのセブルスを後ろから抱き締めた。
「っ」
「うわっ」
ガタンと荒々しい物音を立てて立ち上がった彼に驚き、倒れ掛けた私は、衝撃を受ける前にセブルスによって抱き締められていた。
「夏海…」
徐々に近付く彼の顔に、咄嗟の反応で口に掌を当てる。
「…………」
案の定、ムニっとした唇の感覚が私の手に触れた所で安堵して、セブルスをジトッと見つめた。
「今の何処にそんな雰囲気あった?」
「…………挨拶だ」
「挨拶?」
「い、イギリスでは挨拶にキスをするものだ」
「え、そうなんだ。ハグして頬を合わせるだけかと思っていたよ」
よくテレビとかで見たシーンは、そういう感じだったし。てかセブルスもそんな感じのするんだね。まだまだ知らない事ばかりだわ。
「間柄にもよる」
「そっか。…あれ?でも今、普通に唇にしようとしなかった?」
「……お前が“愛しい”と言ったんだろう」
「言ったけど…?」
「我輩も同じ様に思って居れば、普通だろう」