第2章 はじめましてと噛み合わない会話
手を合わせ終え、振り返ると同時にポスンと頭に置かれた掌。
「うぉっ」
「戻って来る」
「え?」
「…何でもない」
彼なりに気を使ってくれたのだろうか。彼の口から不確実な言葉が出る事にも吃驚だが、こんな私を慰めてくれる事にも酷く驚いた。
今の所私は恵まれている様だ。例え今、夏海さんのかわりであっても、衣食住に不自由は無く、こうして心配してくれる人も居る。
魔法の世界に落ちて、私自身も魔法が使えるとなれば…。あとはもう、これ以上を望むのは罰が当たる様な気がする。
行き同様、道中はさり気なく地面を目視しつつ、セブルスと雑談をしながら森を抜けた。
城へ入る前に、鳥籠ごと掛けておいた鴉に声を掛ける。
「お待たせ!約束が遅れに遅れちゃってごめんね?…ホグワーツの様子はどうだった?此処で離しても大丈夫そうかな?」
首を傾げて目をパチクリする姿は、道端で鴉に遭遇した時のソレにそっくりで、若干怖い。若干怖いけど、どこか愛らしい。
カチャンと音をたてて鳥籠を開いてやると、ちょこちょこと出て来て腕に止まり、そのまま暫し、じっと私の顔を見詰めると、バタバタと元気よく飛び立って行った。
「あ、ねぇっ!商人さんに会ったら宜しくね!…っ、元気でねーっ!」
たった今歩いて来た森の方へ消えていく姿を、見えなくなるまで見送ってから振り返る。
「戻るかすら知れない鴉に、金貨を持たせる必要はあったのかね」
「んー、何となくね。届けてくれそうだなって」
並んで城に入っていく私達は、こんなにも広くて大きな世界の中で、必死にもがいている。
多くのキャラを助けたいとは心から思うけれど、今は少し…この時が永遠で有ればいいのにと願ってしまう程には、セブルスの隣は酷く心地よい場所になっていた。
「…あぁ、そうだ」
「ん?」
「寝付けない時は、早々に来たまえ」
「え。でも流石に迷惑…」
「ギャン泣きされた方が困るのだ」
「……面目無いです」