第2章 はじめましてと噛み合わない会話
森に足を踏み入れてから数分程歩いた地点にある、開けた場所。思っていたよりずっと手前の方で安心した。
「ここだ」
「ありがとう、セブルス」
森の中ではあるが、一面に低い芝生が広がる庭の様な場所で。正直なところ、首輪とロケットが落ちていれば直ぐにでも気付きそうだ。
「気が済むまで探せばいい」
この場所なら、こうして見渡すだけで確認出来てしまう。と、立ち尽くしたままの私に、セブルスが背中を押す。
「…うん。」
何処に倒れていたとか、何処に荷物が落ちていたとか。思い当たる場所を撫でては、必死に目を凝らして探し回った。
それでも結局、見付けることは出来なくて、あの日シアター内で落としてしまった可能性を覚えると、どうにもやりきれなかった。
お昼時を過ぎた頃だろうか。
そう広くは無いこの場所で、2人がかりで探したのだ。大して時間は経っていないだろう。
「…ごめんね、セブルス。折角手伝って貰ったのに」
「それより、いいのか」
「うん。これだけ探したんだもの…。仕方が無いよ」
心配掛けないようにヘラリと笑い、立ち上がったセブルスを見上げる。そのまま杖を取り出して、日のよく当たる端の方に視線を移し、強く気持ちを込めた。
──ブワッ──
辺りを柔らかな風が舞うと、そこには可愛らしい花束が2つ。綺麗に寄り添って現れた。
「私の手を離れた事は、あの子達にとっては良い事だったのかもしれない。…ちゃんと埋葬してあげなきゃだったのに。痺れを切らしちゃったのかもね。」
お墓では無い。何も埋まっていないし、墓石も無いその場所はただただ暖かくて、爽やかな風が通るとても心地よい場所だった。
呪文も知らない。そんな魔法があるのかすら知らないまま出した花束を、それぞれ撫でて手を合わす。
「君達が苦しまなければそれでいいの。もし戻って来たいなら、いつでもおいで。今度は私が君達の傍にいる。
だけど望んで去ったなら…
…長い間、ずっと支えてくれてありがとう。これからは好きに生きて」
既に亡くなった相手に“生きて”とはおかしな話だが、何故かそれがしっくりくる。死後の世界とか、転生とか。別に信じている訳では無いが、否定もしていない。
もしもそんな未来があるなら、今度は自分の好きに過ごして欲しいと、純粋に思ったのだ。
「愛してるよ。リク、ルナ」
