第2章 はじめましてと噛み合わない会話
「私が来た時には、起きてたみたいだけど」
「…あぁ。」
……。何その絶妙に気になる間は。
まぁ、でも突っ込んで良いのかも分からないし?適当に返事をして、ベッドから抜け出す事にした。
まだ身体は重く、頭もボウっとしてはいるものの、動けない程では無い。こんな調子で仕事をする事は日常的にあるし、立てれば仕事は出来るといつも自分に言い聞かせているので、あとは気力だけだ。
「あ。そうだ、セブルス。プレゼントありがとう!
鴉の事も杖の事も、お見通しってぐらいにドンピシャで凄く嬉しかった」
シャワーを浴びて支度が済んだら、手当して貰いに来ると約束して寝室の扉を開く。セブルスの話だとこの扉も例の“開かずの間”だったらしい。
まぁ、そのおかげで(彼に迷惑を掛けたものの)私は助かったのだ。危うく泣き疲れて眠るか、泣き明かした挙句一睡も出来ずに精神を持って行かれるかのどちらかだったろう。
興味深げに扉の向こうを覗き、私の寝室に繋がっている事を確認しながら生返事を返す彼をクスリと笑って、浴室へ向かった。
夢の様な出来事だからだろうか。現実だと受け入れてはいるが、あんな失態をかましたのに“まぁいいか”程度にしか思えない。迷惑を掛けたセブルスには悪いのだけど、本来なら数ヶ月は引き摺る様な事なのに。
熱めのシャワーを頭から被り、鈍い頭痛をやり過ごした。
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身支度を整え終えて、寝室の扉をノックする。
返事のかわりに扉が開き、セブルスが出迎えてくれた。恒例になった傷の手当を大人しく受けて、昨晩気付いたロケットの話を持ち掛けた。
「それで、セブルスに余裕があったら私を見つけた場所に案内して貰えないかな。鴉も放してあげたいし。」
「やはり逃がすのか」
「うん、約束だからね。でももしその気があるなら、セブルスがくれた書類の通り“相棒”にスカウトしてみようと思う」
そうか。と言葉少なく相槌を返す彼との会話も、だいぶ慣れてきた。数日前までは心のどこかで彼の発言や間、行動や視線や呼吸にすら、僅かに気を張っていたけれど。
あれこれやらかした間柄では、もういいか。と言うのが実際の所な感想だ。