第2章 はじめましてと噛み合わない会話
──ガタガタッ─ガタンッ──
騒がしい物音を立てながら部屋に入って来たのは、求めていたセブルスその人で。涙でグシャグシャになった私と目が合うなり、何事だと駆け寄ってきた。
…セブルスも目に見えて焦る事あるんだね。私なんかの事で。
「お前何処から…っ、何をしている」
「ううっ、ひっく…はぁ。ねむいの…」
「はぁ?」
「…ねむいのおっ!でも、…ねれないのぉっ…」
グズグズと泣き喚く私の、言いたいことが通じたのか。それはそれは大きな溜息をついてから、ベッドにしがみついたままの私を横抱きにして、セブルスのベッドに寝かせてくれた。
「薬は」
「うぇ、のんでない…」
「はぁ」
心当りでもある様な素振りで溜息をついて、私の隣りに横になると、驚く事にそのまま抱き込むようにしてピッタリと身体を寄せた。
「目が覚めてから話を聞く。今は寝ろ。」
大して温かくもないセブルスの体温と、香りに包まれてポロリと涙が流れると、これ迄が嘘の様に眠気が襲って来た。
「あり…と……ぉ…」
押し寄せる睡魔の中で、これだけはとセブルスへの礼を口にして身を任せると、そのまま意識を失った。
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「……ん…」
モゾモゾと身じろいだ瞬間に、サラリと髪を滑る掌感覚を覚えて、飛び起きる。
「早かったですな」
「あ、え…?セブルス?」
「気分は」
「えっと…、まだ眠れそうだけど割とスッキリ…あ。」
一瞬状況が掴めなかったものの、すぐに昨夜の事を思い出し、恥ずかしさと申し訳なさで顔から火が出そうだ。
「あああぁのっ、ごめんなさいっ!」
ガバリと勢いよく下げた頭はフラっとしたが、それよりも。何という失態だろうか。昔から眠気がピークを超えると、泣きじゃくりたい衝動に駆られることはあったが、まさかこの歳で本当にやってしまうとは。
かくかくしかじか。事の経緯を話して、寝室同士を繋ぐ扉から勝手に入って来た事もきちんと謝罪をした。
「繋がっている?」
「うん、夜中に気付いて…。今日話そうと思ってたんだけど、その前に使って来ちゃったみたいで…。勝手して本当ごめん。」
「別に構わん、使える物は使え」
「ありがと。それはそうと、セブルスはちゃんと寝たの?」