第2章 はじめましてと噛み合わない会話
真っ先に思い浮かんだ呼び寄せ魔法を唱えてみても、何の反応もなく。魔法が発動したのかすら分からなかった。
ならばと、すぐに目に見える呪文。守護霊の魔法を口にして驚いた。杖から形作られたのは、無数の動物だった。
本来1匹がスタンダードな筈だが、こんなにもワラワラと現れると何だか怖くなる。私の苦手な蛇や蝙蝠までリアルに現れるのだから。
犬猫のスタンダードなものから、ライオンや鷹、フクロウや狼。不死鳥やユニコーンの様な伝説と言われる生き物まで多くの守護霊が姿を現し、寝室は一気に動物園とかした。
ハッと我に帰り慌てて流れ出る呪文を切ると、彼等は徐々に薄くなり、煙の様に筋を残して消えていった。
「……いま、私が守護霊を出したんだよね?」
予想外過ぎる結果にバクバクと高鳴る心臓を鎮め、早々に杖を仕舞うことにした。何だかもう、思っていた世界と違い過ぎて着いていけないというのが本音だったりする。
それから暫し、セブルスに貰った魔法集を流し読みして、時刻は朝5時を少しばかり過ぎたところ。身体が怠くて熱っぽい感覚に眠いのだと悟が、幾ら目を閉じても気付くと勝手に開く瞼が怨めしい。
「…セブルス起きてるかな」
兎に角眠たくて、上手く回らなくなった頭で必死に身体を起こし、セブルスの部屋に続いていた先の扉の前に立つ。こんな事ならいっそ、もっと早くに睡眠薬でも試してみるんだった。
今から飲んだら、下手したら夕方迄起きないかもしれないと思うと、今更飲む気にはなれないし。しかしながら、ここ迄眠いと感じるのも久し振りだからか、泣きじゃくりたい衝動を必死に堪えて、遂にその扉を開いた。
「セブルス…」
ノックするのを忘れたとか一瞬頭の片隅を過ぎったけれど、何よりも優先すべきは私の睡眠。まだ寝ていれば、こっそりと隣にお邪魔すればいい。
起きていれば事情を話せばいい。きっとセブルスの事だから、何とかしてくれる。
そんな事を思いながら部屋に入り込んだものの、残念ながらセブルスは不在。身体を休めるベッドは目の前にあるのに、肝心なセブルスが居なくて。普通に考えれば仕事部屋にいるかもしれないのに、この状況で私は絶望感でいっぱいだった。
「ううぅ、…やだぁ。せぶ、せぶ…すぅ…ふえぇっ、セブルスぅっ」
まるで3歳児の様にボロボロと涙を流して、ベッドにしがみついた数秒後だった。
