第2章 はじめましてと噛み合わない会話
そんな彼等を、私は無くしてしまった。
元の世界で着ていた服のポケット、リュック。ポーチや封筒の中身、財布まで。絶対に入れる事の無い場所まで隈無く捜しても、ロケットどころか首輪すら見付けることは出来なかった。
思い出せ…、っ思い出せ!!
頭を抱えて、必死にあの日の事を思い出す。ズキズキと痛み出す頭を鷲掴み、ゴンゴンと何度も掌を押し付けた。
あの日映画館で…、そう。あのときは確か、映画中に鈴の音が響いたら大変だと、右手に下げたロケットを鈴ごと強く握りしめていた筈。
てことは…
「禁断の森か!」
あの日私が落とされ、意識を失っていた場所。…首輪につけているのだ、そもそも簡単に外れる様なものでは無い。
あぁ、もう。何でもっと早くに確認しなかったんだろう。
夜も遅い。こんな時間にセブルスに場所を教えて貰う訳にはいかないし、かといってホグワーツの中ですら把握出来て無い現状、1人で禁断の森に辿り着ける訳もない。
「はぁ…。本当、情けない。……ごめんね。」
込み上げる後悔と罪悪感に天を仰ぎ、長い夜を迎えた。
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結局一睡も出来ぬまま朝を迎えたが、その間部屋の細かな部分を見回って気付いた事があった。
その1。部屋はどこも綺麗で、恐らく何かの魔法が掛かっているか、誰かが定期的にメンテナンスをしているようだ。
その2。驚く事に、スマホやタブレットの他にもこの部屋には家電が設置されていたが、どれも正常に動くということ。勿論、充電もできる。
その3。食料もきちんと用意されていて、冷蔵庫やキッチンのラックの中には既に日本食が綺麗に収まっていた(賞味期限も確認したけれど、どれもこの年のもので、まるで昨日・今日購入して並べたかのようだった)
その4。セブルスと来た時には気付けなかったが、実は寝室にはまだドアがあって、開いてみたのだけれど…。驚く事にそこは、せブルスの寝室と繋がっていたのだ。驚きの余り直ぐに扉を閉めたのだけれど、彼はこの事を知っていたのだろうか。
布団に潜り込んでなお睡魔は寄ってこないので、仕方無しに杖を手にして魔法を唱えてみる。
「アクシオ、ロケット」