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ハリポタ

第2章 はじめましてと噛み合わない会話





この地に降り立った日から今日まで、自分の持ち物をしっかり確認していなかったな。なんて事を今更ながらに思い出し、冷蔵庫やラックを一通り物色してから、共にこの世界に着地したリュックを漁る。

メイクポーチはあったし、財布もあった。日本円ならば、丁度30万位はここにある。振分けしてそれぞれの口座に入金しようと、あの日の仕事前にATMで引き出しといて良かった。

小分けにした封筒の中身は全てちゃんと入っていたのを確認した所で、ハッとして黒い大型のタブレットを手に取る。

すっかり忘れてたけど、スマホとかタブレットとかホグワーツに入った時点で使い物にならなくなるんだったよね。たしか。

…プルプル震える手でスマホの電源を入れれば、驚く事に普通に起動した。ロック解除をして恐る恐る画面を見やれば、別段変わった所はない。

圏外になっているので使う事は出来そうにないが、どこも壊れていないし、アプリやら写真やら何一つ欠けること無く収まっている。勿論、通信等を必要としないアプリなんかは開く事が出来た。

ホーム画面には沢山の写真を加工した自作の壁紙を設定していて、大好きな人達がそこには映っている。ホットミルクを啜りながら、ぼんやりとそれを見詰めてふと思い立った。

精神的に弱った時は、いつも愛犬・愛猫の分骨したロケットを身に付けていた。深く考えもせずに、普段リュックに下げている場所に手を伸ばした辺り、私のメンタルも何だかんだ不安定なのだと苦笑したその時。

「え、あれっ?」

いくら手で探っても辿り着かないロケットに焦り、慌てて立ち上がってリュックを探す。

遠出をする時は落とさない様に、内ポケットに仕舞うこともある。ガサガサといくら捜しても発見できない事に焦りに焦り、遂にはリュックの中身をバラ撒いてみても、やはり彼等は見付けられなかった。

途端、血の気が失せて行く感覚が全身を襲う。

「うそ…、うそっ!?」

分骨は本来良くない事だと聞いた事がある。それでもペットではなく、家族として共に育った彼等をほんの数日で土にかえす事は、私は受け入れ切れなかったのだ。

遺骨を抱いて。一人静かに涙しながら眠りにつく私を見兼ねた両親が、一度断った分骨を依頼し私の心が“ある程度落ち着くまで”そう思って家族でロケットを持ち歩いていたが、もう何年も過ぎた今尚、彼等を手放せずにいる。




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