第2章 はじめましてと噛み合わない会話
実家では父の部屋があった場所。左の手前の扉を開くと、そこは和室の寝室。正にその部屋だった。
「…それは」
「布団だよ。イギリスで言うところのベッド。」
「あぁ、これが。ならば此処はベッドルーム…失礼」
納得した様に頷いてから何かに気付くと、一言謝って直ぐに身を引く蝙蝠さん。…紳士的にNGって事かな?
今更って感じするけど、まぁいいだろう。
左の扉。奥側を開くとそこは、予想通り脱衣所。その先にバスルームがあった。この時代に有り得るのだろうかと思える程、現代の日本と同じ家具。更に洗濯機まで取付けられている。
「あれ?ホグワーツって、水しかひいて無いよね?火も電気も魔法でどうにかなるし。」
「左様。引いているというよりは処理や、飲み水の補給は城内部の魔法で独自に行っている。」
「え、そうなの?」
また違う。そう言えばさっきの寝室にテレビついてた。…待って。本当、こんがらがってきた。
「…いいや、取り敢えず次行こ」
続いて右側、キッチンの奥。ここは本来、勝手口で駐車場に繋がる扉。次第に疲れて来てしまい、もう何でもいいやと一際軽い扉を開けば、そこは予想外にもう一部屋。
一人暮らしで借りている、賃貸アパートの部屋だった。本来、6畳ワンルームにロフト付きのアパートだったが、10畳程の広い室内で、ロフトで使ってた家具は全てこの一室に収まっていた。
此処にも扉があり、開いてみるがそれは全てアパートの作りと同じ。風呂&トイレのユニットバスと、もう一つはクローゼットだった。
私の生活圏が全て表されているこの場所が、何だかとてつもなく恐ろしい物に思えて来て、セブルスの部屋に一度戻ることにした。
鴉に一言謝り、明日になるかも知れないと口にすると、驚く事にその場で休み出した姿を見て、商人の言葉はやはり本当かも知れないと頭の片隅で思い、ソファに倒れ込んだ。
「夏海」
「……ちょっとついていけなかっただけ、大丈夫」
「…荷物は運んでおく、暫く休むことですな」
「んー、ありがとセブルス」
自分の育った、自分の過ごしていた部屋だけど、違う。安心感がある筈の部屋なのに、何処か恐ろしくて、出来ればセブルスの部屋で暮らしたいと言うのが本音だ。
でも、流石にそんな事は頼めないし、申し訳ない。溜め息をついて心を決めるしか道は無いのだけれど…。
