第2章 はじめましてと噛み合わない会話
オリバンダー自身とても楽しかったらしく、息を切らして並べた箱の前でキラキラとした顔を此方に向けていた。
何本もの杖を全て試して、同じく杖を数本所有しているセブルスの意見も聞き、総合的に見てから購入したのは結局3本。最初の2本と合わせて計5本を持ち帰ることになった。
全部で25ガリオン。この地の金銭感覚はよく分からないけれど、確かハリーの杖が1本7ガリオン程度だった筈だし。3本目の10ガリオン以外はまぁ、無難なところだろ。
「何に使う気だ?」
「んー?あぁ、この子達?
護身用だよ。それに、私以外の人が使う予定もあるから。早目に私の手元で、慣らしてあげたかったんだ」
「…そうか」
お昼時を過ぎて居るようだ。日が僅かに落ち始めている。次は何処に向かうのかと尋ねれば、セブルスの用事で本屋に行きたいらしい。
本ならば勿論私も欲しいのだけれど、私が行ったところで今の自分に必要な物は分からない。何ならさっさと教科書でも漁っていた方が良さそうなので、潔くセブルスに事情をはなし、彼の独断と偏見で適当に見繕って来てもらうことになった。
その間私は雑貨屋と、その先のマダムマルキンの洋装店で買い物を済ませる予定だ。
セブルスの買い物が済んだらマダムマルキンの店で落ち合う事になっているし、何度も何度も雑貨屋から服屋迄のたかだか数十メートルを説明された挙句。
雑貨屋まで送ってくれるという過保護っぷりを発揮した蝙蝠に、最早苦笑しか出来ない。
「あ、ありがとうセブルス。」
「あまり買い込み過ぎない事ですな」
最後に嫌味を落として去って行くのは、何とも彼らしい。まぁ、今日足りない物は後日買いに来れば良いし、何もダイアゴン横丁だけで買い揃える必要は無い。
何だったら、日本製品を取り扱う店だってロンドンならあるだろうし。
セブルスの背が見えなくなってから、雑貨屋の扉を開く。ティーカップや羽根ペン等、多くの物が取り揃えられていたけれど、やはり魔法道具が多くて。私としては使い慣れた普通の物が欲しい。
さっと眺めてから、服屋に行こうかと視線を移したところで、足が止まる。何やら外が騒がしいのだ。
店主の怒鳴り声と共に、籠の中の鳥がバサバサと羽根を撒き散らしている。普段なら特に気にせず、買い物を続けるのだけれど…。吸い寄せられるようにして、気付くと私は店を出ていた。
