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ハリポタ

第2章 はじめましてと噛み合わない会話




1度棚の奥に姿を消してから持って来たのは、艶めかしい木の箱に入ったシンプルな杖だった。形はまさにストレート。歪みも曲がりも無かった。

「桜の木に彼岸花の花弁、鴉の羽。25cm。よくしなる。」

不死鳥のーとか、ドラゴンの心臓のーとか。想像していたのとは全く違っていて拍子抜けしたものの、オリバンダーさんに促されるまま杖を手に取ると、杖ではなく私の体から桜の花弁がぶわっと舞い上がった。

思わず後ずさった先にセブルスが居て、トンっとぶつかったものの、何処かほっとした様な雰囲気を放って私を受け止めてくれた。

「驚きました。素敵な子ですね!」

とても握りやすく、黒地に真紅のラインが走るその杖は非常に魅力的で、何より杖から力が湧いてくる様だった。

「お代はいりません。そちらは既に貴女の物でした。」

「(てことは夏海さんのか)そうですか、…でしたら。もう2本。いえ、3本新しい杖を頂けないでしょうか。」

「3本ですか?」

「何に使うつもりだ。」

「これから絶対、必要になる筈なんです。」

お願いしますと頭を下げて、オリバンダーが差し出したのは指だった。

「?」

「もう1本は既にその箱の裏側にありますよ。」

「え?」

頂いたばかりの杖の箱を裏返すと、確かに指でスライドさせれば開きそうな造りになっていた。

「材料は全く同じです。杖腕は左用で、長さは30cm。此方は固くて…、少し頑固。」

握らなくてもそっと指先でなぞるだけで、私にピッタリだと気付ける。無機物な筈なのに、何処か暖かさを感じるのだ。

「素敵ですね、頼り甲斐がありそうです。」

「そうでしょう。後は…」

「後は、私の言う言葉から選んで貰えますか?たぶん、それが私が会うべき杖だと思うので…。」

職人さんに口出すのも考えたのだが、どうにも先程から頭の中で幾つものワードが渦巻いていて気になっていた。

快く受入れてくれたオリバンダーさんに礼を言ってひたすら、単語の羅列を口にしていく。

「鴉・鹿・犬・猫・狼・蝙蝠・松・檜・彼岸花・金木犀・桜・梅・不死鳥・ユニコーン…」

バタバタと思いついた物を、片っ端から引っこ抜いて来たようだ。至る所で雪崩が起きては、埃が舞い上がっている。

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