第2章 はじめましてと噛み合わない会話
表面の動物達は皆、仕切られた1つ1つのプラスチックの蓋にまで走り寄ってくると、各々担当があるようで。途端に揃って鎮座する。
「左から頭痛薬・胃薬・安定剤・睡眠薬と導入剤・痛み止め…、アポトキシン4869と、その解毒剤だ。」
「ちょ、ぅえっ!?…アポト……嘘でしょ?」
「…夏海が付けた名だが」
身体は子供、頭脳は大人っていうアレかな???…いや、ダメだろう!!!他の世界観の持って来るとかダメだろ、もう1人の夏海さん!!!
………ん?いや、ちょっと待てよ。
何で名探偵の世界を知ってんだ?夏海さん。…そもそもこの世界にあるのか?あの作品が。……あー、わっかんねぇ!
「手に取れば、その蝙蝠が必要な薬を指示する。入学前にアポトキシン4869の効果を身体に慣らしておく事ですな。」
「…因みにそれって、体が縮んだりする?」
「あぁ」
…………ですよねーっ!!!何かもう、ここまで来ると突っ込む気力も無いわ。
「これ錠剤だけど、セブルスが作ったの?」
「無論」
「すごっ。ならお墨付きだね。」
「………薬が切れる前に知らせたまえ。」
今の所動物達は大人しく、各々の蓋で待機している。と言うことは、今は薬を必要としていないと言う事だね。まぁ、別段調子の悪い所はないし、怪我はセブルスが見てくれてるからその通りなんだけど。
というか“睡眠導入剤”って、体質的に効かないんだよね…。8種類もの薬を定期的に作ってもらうのも悪いし、いっその事これは要らないって言った方が…。
……いやでも、1度も飲まずに「効かない」って言うのも失礼か。何かの折に試してみて、それから考えよう。
ツンツンと箱の動物達を指でなぞると、擦り寄る仕草をする子や、ヤメロと言わんばかりに器用に避けていく子も居る。本当に愛らしいその子達に既に愛着が湧いていた私は、唐突に名前を付ける事にした。