第2章 はじめましてと噛み合わない会話
「夏海。キミは既に何度か、このホグワーツで生活していた。」
「………っ、え?」
「何も心配はいらない。夏海、大丈夫じゃ。大丈夫じゃよ。」
頬に落ちる雫が、ポタポタと私の服を濡らして行く。“大丈夫”。ただその一言が、のしかかっていた重荷をスっと降ろさせてくれる。
「あ…あ、ははっ。やだ、…わた、し…。
…っ、ダンブルドア校長。と、に…ほんとうに、ありがとう御座いますっっ」
サンタクロースのような声を上げて、優しく笑うダンブルドアに、単純にこれ迄の印象が変わっていく。
「さて、夏海。紅茶が冷めてしまったようじゃ、ちと休憩じゃ。」
____________________________________________
温かなミルクティと、しっとりとしたシフォンケーキを存分に堪能した頃。私の涙腺もすっかり大人しくなり、隣のセブルスも紅茶を優雅に嗜んでいた。
「さて、これからの事じゃが。夏海。」
「はい」
「キミには今年、ホグワーツに新入生として入学して貰おう。」
「は……、え?」
「ハリーは今年ホグワーツに入学する。キミには彼の学友として共に魔法を操る術を学んでもらう。」
「で、ですが校長!」
「なに、費用の心配はいらん。生活費は君が残していった金庫もある。勿論、給料も保証しよう。」
「あ、あのっ
私、この世界に来たのは昨日が初めてです。歳も24ですし。ホグワーツに居たというその方は、私では…ありません。」
至れり尽くせり。黙ってこのご好意に飛び付いてしまえば楽だろうけど、セブルスも言っていたその人がこれだけ愛され、信頼されている以上。嘘なんかつけない。
「ふぉっふぉっ。そうじゃった、そうじゃった。
いや、なに。心配は無用じゃ。その夏海・石田にも許可は貰っておる。」
「でも…」
「校長がそう言っている。何より、そうする他に手は無いだろう。気になるなら返していけばいい。」
「あ…ぅ……、は…い…。」
他に手は無い。そりゃそうだ。仕事を兼ねているから学費が掛からなくても、生きていく以上生活費は必要になる。心の中でもう一人の夏海さんに謝りつつ、必ず返すと誓う他、私に出来る事は無いのだ。