第2章 はじめましてと噛み合わない会話
「ち、ちょっと…。まさか、覗き!?」
「その口は、塞がないと閉じれないのかね」
「むぅ。」
「……座れ」
慌てて口に手を当てて“黙りました”とアピールしたところで、仏頂面の蝙蝠はベッドへ座る様に促すだけ。
「………。」フルフル
昨日の今日で隣に来いと言われて、ホイホイ付いていく奴がいたら見てみたいものだよ?セブルス。何て。内心小馬鹿にして首を振って拒否を示せば、溜息をつかれる。
髪をまとめていたタオルをバサリと奪われ、杖を向けられる。流石にビクリと身を縮めてきつく目を閉じるが、杖から放たれたのは暖かな風。
フワリと揺らして肩に落ちた髪には水気は失せていて、ドライヤーで乾かした後のようにサラサラと艶めいていた。
「ぁ、…ありがと」
口元を手で隠したまま、礼を言ってそそくさと洗面所へ戻る。身嗜みを再度確認し、痕1つない髪を優しく束ねてから置いてきた蝙蝠の元へと戻った。
「あのさ、煙草…吸えるところないかな。緊張しちゃって。」
「ここで吸えばいい」
「ぇ。いや、でも…。臭い付いちゃうと、仕事の邪魔じゃない?嗅覚的に。」
「………」
「どこか、窓のある所か中庭とか。あ、でもここ学校だもんね…。ごめん、無かったら大丈夫。忘れて。」
「この部屋は我輩の自室、どう使おうと我輩の勝手では無いかね。」
「……あー、まぁ…セブルスが良いなら私も助かるけど…。んー…じゃあ、途中で嫌になったら言ってね?」
まさかGOサインが出るとは思わなかったけど、やっぱり少し申し訳なくてキョロキョロしていると「浴室と洗面所は換気口が付いているから、気になるならそこにすればいい」と溜息混じりではあるが、いい情報を貰ったのでさっそく脱衣所の椅子に腰掛ける。
ケースから1本取り出し、口に銜える。そのまま流れる様に火を灯し、携帯灰皿を取り出してから肺まで吸い込んだ煙を漸く吐き出す。
丸1日ちょっとは吸わなかったせいか、若干頭がクラクラして。でも、やっぱり落ち着く。
セブルスとの事も。ダンブルドアとこれからを決める事も。そして、この後私が2人に話す事も。全てが私の願い通りに進むはずは無い。“あの”ダンブルドアだ。
見返りを求められる。必要が無ければきっと、切捨てられる。怖い。目が覚めて、元の世界に戻っていて「あぁ、何だ。随分変な夢だった」なんて事も起こらなかった。
