第2章 はじめましてと噛み合わない会話
時間に余裕がある訳でもないので、シャワーを浴びながら持ち込んだポーチの中を漁る。
バイト先の先輩達と仕事終わりに銭湯に寄ることや、その流れでお泊り会に発展する事が多々あった為、歯ブラシや化粧落とし。シャンプー等のトラベルセットを持ち歩いていて良かった。
前日の薄化粧を落とし、持参のシャンプーで髪を洗う。その流れでふと、自身の身体に目を落とす。
「……ボロボロやぁ。」
目頭が熱くなるのを隠す様に顔面にシャワーを浴びて、そこからはテキパキと。汚れを落として言った。
怪我の手当に使われたガーゼやテープを、濡らさない様に外そうと思えば、どう頑張っても剥がれないし。ならばせめて濡らさない様にと、必死にタオルやビニールで隠そうとして、気付いた。シャワーから跳ねた水が肩に掛かってしまい、慌てて様子を伺うと、何事も無かったかのように乾いていて。
もしやと、肩や腹。濡れる様な物は無いけれど、足首にもシャワーを押し当てるが、どこも濡れた形跡は無い。
治療が必要とされる部分には予め魔法が掛けられていたようで、シャワーを浴びるのにこれと言った不自由は無かった。
ガシガシと水気を切って、例の下着を身につける。驚く位にピッタリなサイズでついつい言葉が漏れてしまう。
「こっわ。…そもそもこれ、誰の趣味よ。」
思い浮かぶ顔は蝙蝠しか居ないのだけれど、まさかと考え直す
。次いでワンピースや、パンプス。小物類をそれぞれ身に付けてから、髪を整える。
「…って、ドライヤーねぇし。」
気付いた頃には後の祭りだが、ビチャビチャなままでダンブルドアに会いに行くのも失礼だし、セブルスに頼んで乾かしてもらう事にする。往復するのも面倒なので、服に合うように軽く化粧もして、最後にもう1度鏡の前で自身の格好を見つめて余計な事を口走る。
「いやぁ…、黒だったらまだしも…。てか、なに。こんな可愛らしいのがセブルスの好みなの?…の割りには下着はセクシー系だし。うわぁ…。」
「我輩の物ではない。…昔、置いていった物だ。」
物音一つせずに背後から声が上がるので、飛び上がって振り返れば、いつの間にか寝室への扉は開いていて、ベッドに腰掛ける形でお馴染みの仏頂面を向けているセブルス。
「ち、ちょっと!いつからいた訳!?…はっ、まさか覗き…」