第2章 はじめましてと噛み合わない会話
礼を言ってベッドルームへ戻り、キャビネットを開けた所で思わず絶句した。キャビネットの中は魔法が掛けられているらしく、ウォークインクローゼット並の広さがあり、最早小さめの小屋のようだった。
しかし、私が言葉を失った理由はそこだけではない。
セブルス本人のものであろうローブや寝巻き、カジュアルなマグル服が並ぶ反対側に、女性もののワンピースや男物のスーツ、それと白衣や私服が数着掛かっていて、その手前にそれより小さい…中学性位のサイズに思える、ワンピースやローブがこれまた数着ずつハンガーに掛けられ、綺麗に並べられていた。
女物の服にも驚いたし、明らかにセブルスのものでは無い男物や、生徒の物と思われるローブや服。
なんの為?どんな理由でそんな物をキャビネットにしまい込んでいるのか。聞きたいけれど、色んな妄想が頭を過ぎってしまい、とてもじゃないが聞き出せない。
出会って1日で、これまで想像もしてなかったセブルス・スネイプが浮き彫りになってくる。職場と言えど、自室に他人の物が置いてある様なキャラクターには思えなかった。
…ま。昨夜の事を思い返せば、キャラクター的な概念はだいぶ薄まったし。あまり“こうだったはず”“こうあるべき”と、固執しないようにしなければいけないよね。
カラーボックスにキチンと置かれた私のバッグを持ち、キャビネットを出て、ベッドの向こう。そろりと扉を開けて確認すれば、確かにそこはバスルームだった。
「うわ、ひろっ。」
自分しかいないのだけれど、自宅以外の場所って慣れるまではどうしても怖くて。こうして独り言でも言って気を紛らわすのが、私の恒例行事だ。
「タオルはある、服は…これかな?」
手に取ってみると、シンプルな白のワンピースが広がる。
「………………………。」
思わず黙り込んでしまったのは、それが本来私が着ていた服では無いことと、ワンピースの間から真新しそうな下着が転がり落ちた事。更によく見ると、脱衣所の隅にストッキングやローヒールのパンプス。洗面台のスタンドには、それに合わせた様な色合いの腕時計とピアスが1つ飾られていた。
色んな感想がドワッと湧き出てくるが、突っ込むのも疲れてしまい、無言で片付けてテキパキと裸になると、何事も無かったかのようにバッグから取り出したポーチを手に、浴室へ足を踏み入れた。
