第25章 (日)願わくば
毎日は全く退屈だった。
太陽が天辺に昇る頃に起きて、だらしなく顔を洗い、寝間着を着替えもせず何気なく外を見て眩しさに目を細め、冷蔵庫を開け戸棚を開け何もないなとため息をつき、最後の一つだった小さなアロエヨーグルトの蓋を開ける。
時々起きると夕方だった。何をすることもなく、まるでそれが仕事のように只時間を潰していた。
寝ても寝ても眠い。次に寝たらもう起きないのでは、と思って、それを想像したら何だか笑いがこぼれた。
そうだったら、退屈な毎日が少しは面白く終わるのだろう。
何も音はしない。誰の気配もない。歯が立たないほど平坦な毎日を私は低空飛行で生きていて。
楽しさも悦びも怒りも悲しみもなく、ただ退屈していたのだ。
「こんな私に何があるっていうの」
「そんな貴女も私の国民です」
空虚に問いかけた答えは案外しっかりしていたのが驚きだった。
「生きて死んでそれっきりよ」
「しかし確かに私は貴女の中に存在する」
「世界はこんなにもつまらない」
「世界に挑戦していなければ永遠にそうでしょう」
「いつか私は全てを擲ってフェンスの上から飛んでしまうかも」
「大丈夫」
私の祖国は、本田菊は、秋津は、そう言って優しく優しく微笑むのだ。
私の全身を柔らかく包むような眼差しをくれる。