第25章 (日)願わくば
「私は貴女と共にあります。死ぬ時も一緒ですよ」
なにそれ。別に寂しがって言ったわけじゃないのに。
笑おうとした私は、しかし叶わずに、何故だか唇が震えてしまった。
ぎゅっと噛みしめる。
「死なば諸共、私も共に。貴女の遺した祖国は別の私が守ります」
肩に手が触れた。体温を感じるしっかりした手が、私の肩を引き寄せて抱く。
風の中に涙の筋が流されて砕け散り、頬が冷めた。
何だかやけに、心がつらい。
「私は貴女の中の祖国です。貴女一人は小さいけれど、それでも確かに私に影響を与えている」
「…わたしは、なにも」
「貴女の力は私の力。出来れば…」
彼は少し言い淀んで、苦笑したようだった。
私の体を抱く腕に力がこもる。何かに甘えるように私の首筋に顔を擦り寄せて埋めた。
「出来れば、もう少し生きて、私の力になってくださると嬉しいのですが」
かすれた声には必死の懇願。
必死とは。
必ず死ぬと書くのだな、と私はぼんやり思った。
2013/