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【APH】本田菊夢 短~中編集

第11章 (黒日)玩具 (捕虜になったヒロイン)



足音が私の目の前で止まった。目の前には黒い革靴と軍服の裾。傷も汚れもついていない新品のようなそれ。
ちらりと横目で見上げれば、想像通りの人物が薄い笑みをたたえて私を見下ろしている。

「何度も言わせないでくださいね」

身体を折った彼は腕を伸ばし、白い手袋をした手で私の髪を鷲掴んだ。
そのまま力任せに持ち上げられて、私の髪がぶちぶち音を立てる。

「私は気が長くありません。良い子にしていないと、首をはねてしまうかもしれませんよ」

私は真っ正面から彼を見つめて、まるで心の込もっていない笑顔に震える。

いつ見ても美しく気品ある存在だ。
噂に聞く彼はまるで賊でもあるかのように荒々しく冷酷で無慈悲なものばかりなのに、この口調と整った外見からは想像もつかない。
けれど、だからこそ、説得力があった。
鬼神と謳われる彼、本田菊。


「貴女はこれから私の玩具です。言っている意味がわかりますね?」

「………」

わからない、と言うのが怖かった。だから私は頷く。

「玩具の役目は子供を楽しませる事です。生憎私は子供ではありませんので、子供騙しは通用しません。…せいぜい愉しませてくださいね」

がつんと殴られたような気分になった。
目を見張る私に、彼は艶然と微笑みを深くする。

「愉しい玩具は長生きしますよ」

私の人生、終わった。
そう思った。



2014/
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