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短編集

第2章 それは夢より(楽夢)




『ちょっと』
「悪い、人を探してる」
『目の前にいるんですけど』
「っ、…いたなら言ってくれよ」

楽が目を合わせない。
それどころか今日見た夢のせいで私も似たようなものだけど。

『…気付かないのが悪い』
「そう…だな」

さっきからチラ見しては顔を逸らす。
楽はどうしたんだろ。

「今日のお前…」
『?』
「別人かと思った…かわいい」
『っ!ぁ、ぅ…い、移動しよ?』
「あいつらに見せたくないな…」
『あいつらって?』

どうやら楽一人じゃないらしい。
一人飲みなんてのもあるのは知ってるけど。

「近くのバーに天と龍がいる」
『メンバーで集まってたってこと?それじゃあなんで私を呼んだの』
「お前…今日がなんの日か知らないのか?」
『8月16日…?女子大生の日?』
「なんでそんなこと知ってんだよ」

聞いたのは楽の方なのに。
それ以外に何かあったかな…。

「俺の…」
『俺の?』
「誕生日だよ」
『へー…やおとm…ふがっ!?』

フルネームを言いかけて口を手で塞がれた。
人通りが多いのにうっかりしてた。

「まさか知らなかったのか?」
『…だって聞いたことないし、そこまできょ…あ』
「なんだよ」

楽がまじまじと私の顔を見た。
顔が見れなくて私は横を向いた。

「耳まで赤いぞ。何かあったか?」
『う、うるさい…早く行こ』
「仕方ねえな」

呼んでおいて仕方ねえはないと思います。




◇◇◇





まさか連れてこられたバーと言うのがいい雰囲気の場所だとは思わなかった。
それに今日は貸切らしい。さすがTRIGGERは違う。

「今日の主役がゲストを連れて来るなんて馬鹿なの?」
「うるせえな。俺が呼びたかったんだよ」
「今日はちゃんなんだね。久しぶり」
『お、お久しぶりです…』

こんな店初めてでどうしていいのか分からない。
助けてくれそうな人は……残念ながらいない。

「今日のちゃんすごく可愛いね」
『あ…ありがとう…ございます…』
「楽には勿体無いね。どうして幼馴染なの?」
『勿体ないってどう言う意味で…』
「おい、口説いてんじゃねえよ」
『くど…!?』

今私口説かれたの…?
九条さんと十さんに?そんな馬鹿な。

「今日はこいつ俺の女だからな」
『…はい?どうして私が楽の女に…っ!』

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