第3章 ゚+o。◈。o+゚+o。◈。o+゚+o。◈
【嘘 1】
「嘘つきだって思ったろ?」
コールしたのは、ちょうど30分前
そろそろ店を締める時間だろうな…って計算した
予想通りに、電話に出たヤツは
戸惑い気味に間が空いたものの、
やっぱり笑顔で応えてくれた
「そんなの思うわけないじゃん!
誘ってくれて嬉しいよ、しょーちゃん」
もう吹っ切れたはずなのに、
胸を締め付けられるような感覚を意識してしまうと
やっぱり、"話がある"だなんて誘った自分に
……嫌気が差した
「それなら良かった」
雅紀の店の側にある居酒屋
酒を飲むような、馴れ合いの存在でいてはいけない
こうして会うことすら、許されはしないけど……今日は仕方無い
「話ってのはさ、
予想ついてるだろ?」
「え…」
相変わらず顔に出てるから、
構わず話を続けた
「潤だよ…
アイツ、バイト勝手に辞めたろ?
迷惑かけて悪かったな」
「ええっ…!そんなの、
なんで謝んのっ」
慌てたせいで、
雅紀の肘がグラスに当たって、ビールが溢れた
流れた液体が、
雅紀のジーンズにシミを作る
「わ…っ!うわ~濡れちゃった」
オシボリで拭っても、
時すでに遅しで…
「わ~、でも…ほっとけば乾くか!」
「ほら…ハンカチ使えよ」
「わ…さすがしょーちゃん。ありがと」
ポンポンと叩きながら、
雅紀は笑うけど
ザワザワと心が揺らぐ
戸惑う自分と
“ウソツキ”
そう囁く、もう一人の自分
"潤のことをダシに使ったんだろ?"
"自分と会ってた証拠を残せて良かったな"
"それとも…
着替えた方がいいだろって…"
"どっかに誘う?"
"疚しい気持ちがなかったなんて、言い切れるか?"
"吹っ切れただなんて、いったいどれだけの月日を想い続けた?"
"そう自分に暗示をかけただけだろ?"
"二宮に、ふたりで会ってたって気付かれたらいい"
「しょーちゃ…ん?」
「あっ、え…なに?」
「ううん。急に難しい顔するからさ」
俺は…
今、何を考えてた?
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