第1章 【織田軍】プロローグ/盃に月を映せば【丹羽長秀】
頭がくらくらして、何も考えられない。
快感で身体が満たされるというのはこういうことなの?
『あぁ…んぅ…』
「もうこんなに蜜を溢れさせて、随分可愛い反応だな。期待してるのか?さぁ、力抜けよ…もっと良くしてやる。」
いくら抑えようとしても、自分のものとは思えないほど、凄くやらしい息に甘く切ない声が零れていく。
長秀さんに最初にキスされた時に、こんな展開になることは決まっていたような気がする。
唇と唇を重ねた噛み付くような吸血も、
信長さんのつけた胸元の傷跡に長秀さんの指や唇や舌が這うのも、
全然拒めなかった。
―――いや、拒めなかったんじゃない。
私、拒まなかったんだ――――
それがなんでかなんて、そんなのわかりきってるけど、
今は気づきたくない。
誰かに身体を触れられて、
こんな感覚に陥ったことなんてなかった。
長秀さんにキスされただけで、
身体に触れられただけで、
中心を優しく撫でられただけで、
気持ちよくておかしくなりそう。
そろりと長い指が普段誰にも触れられない場所にゆっくりと潜り込んできて、優しく解されるような動きが内壁から伝わってきて、どんどん中が潤んで液体で満たされていくのがわかる。
「お前の中、熱くて溶けそう。蜜が湧き出てくる泉みたいだな。なのに、俺の指を咥えて離そうとしないが、そんなにいいか?」
『ぁ…んっ…やっ…からだが、なんか、へん…っ…。』
まるで自分の体ではないかのように、
長秀さんから与えられる刺激に反応して、
中が蠢いて、
息が苦しいのに、
恥ずかしいのに、
なのに、
もっとこの感覚に満たされたい。
そう思った。
思考のおぼつかない中で私に影を落とす長秀さんを見ると、
さらりとした綺麗な銀髪の隙間から
熱を持った視線で瞳の中を覗き込まれてドキリとした。
長秀さんに触れたくて、
彼の頬に手を伸ばしてそっと撫ぜると、
少し意外そうな表情を一瞬だけ浮かべる。
「どうしたい?」
『もっと長秀さんの熱を感じたい。』
ふっ。やけに素直じゃねぇか。と呟き、
「あぁ。最初からそのつもりだ。」
そう言って、にやりと悪戯に笑った。
それから、盃に映した月を放って、何度かわからないほど、何度も彼の冷めやらない熱を全身で受け止めたのだった。