第2章 ここはどこだ?(花宮side)
花宮side.
「花宮ぁ〜ちょい待ち!!」
「あ?」
部室を施錠しようとドアノブに向けていた視線を呼びかけられた方へと向けると、派手な紫髪が近づいてきて俺は手を止めた。
「門で待ってろっつったじゃねーか、原」
「それが、忘れ物しちゃったんだよね〜」
テヘッと小首を傾げるヤツに、ため息をつく。
「さっさとしろ」
「はいは〜い」
目の前の部室に入っていく原の姿を、俺は壁に背を預け見届けた。
チッ……
金曜日、部活終わり。
制服にも着替え、後はここの鍵を閉めれば部長兼監督である俺のやるべき事は終了だった。
早く家に帰りたい。
いつになく部活で身体を酷使したからか、身体がダルかった。
あー、まじでさっさと帰りてぇ。
「おい、まだか!」
「んー、もうちょい」
忘れ物取るのにもうちょいも何もあるか。
扉の向こう、くぐもった声に苛立ち俺がドアノブを押し開けると、瞬間、ピンク色の煙が立ち込め目を瞑る。
なんだこれ、部屋の中から溢れてきやがる……!
手で払っても払いきれないそれに咳き込む。
煙を吸い込み過ぎたのか、だんだんと意識が朦朧としてきて、俺はあるはずの壁に手をつこうとして、その場に倒れた。
「……ん」
ぼんやりとする視界。
自分が倒れていたことに気づき、舌打ちをしながら起き上がった。
そして、目を見開く。
信じられないことに、俺が目覚めたのは見知らぬマンションの一室だった。