第7章 ※照らしだされた色欲(両side)
花宮side.
すっかり暗闇に慣れた目で、薄ぼんやりとした天井を眺めていた。
カチ、カチ、と時計の針が進む音が響く。
ふわりとあくびをする。
疲れているはずなのに、やけに目が冴えてしまっていた。
「やっぱりソファーだと寝心地悪ぃな」
寝返りも打てずに仕方なくぼーっと天井を見続けていると、ガチャリ、とやけに明瞭なドアノブの音が鳴り響いた。
ぺったぺったと足音が近づけば、ドッ、とこの部屋のドアに何かがぶつかる。
すぐに控えめな女声が上がった。
「いたぁ~……」
おでこをさすりつつ部屋に入ってきたのは越智だった。
その上体はやけにふらふらと落ち着きがない。
って、あ、またぶつかった……あいつ何やってんだ。
部屋に入ってくるなり越智はゾンビのように手を前に突き出しながら歩いているのだが、どうにもその足取りはおぼつない。
電気付けりゃあいいのに。
俺は起き上がると、「おい」と声をかけてみた。
特に反応もなく、越智は相変わらずふらふらしている。
俺は立ち上がり、ずかずかと歩み寄る。
「おい!!」
「うわあ!!」
越智の肩を引くと、振り返った弾みにやつの手から何かが飛び跳ねて、俺は慌てて掴む。
手に何か冷たい液体がかかった。
「何だこれ……って酒臭え!!」
「は、花宮!? 起きてたの!?」
「お前今まで酒飲んでたのかよ」
どうりでふらふらしてるわけだ。
「つーことは、これ酒か?」
手に持った、形状からおそらくコップだろう物に鼻を近づけると、酒臭さとほのかな梅の香りを感じた。
試しに、と一口飲もうとすると、「だめだめ!!」とものすごい形相の越智が腕を伸ばす。
「おいバカ!!」
ぐらり、と体勢が傾いた。