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遊戯王 短編夢

第1章 VRAINS


放課後、音楽室。もはや習慣になりつつある2人きりの空間で、歌が止む。

「―――藤木君。…藤木君」
「…、…」

呼びかけると、はたと目を覚まし愕然とした表情をする同級生に『…大丈夫?』と声をかける名前。

「…悪い」
「私は別に」

藤木遊作は授業中など、見る限りよく眠っていた。名前の歌を聴きに来る時は特に。先程の『悪い』はそれについての謝罪だ。

「…いや…、わざわざ歌う時に言ってくれるのに、本当にすまない」
「別に大丈夫…兄さんもそうだったから慣れてるし、本当に気にしないで」

『じゃあ、』と言って名前は音楽室を後にしようとした。

「っ名字!…さん、」
「…?」

ガタ、と席をたった遊作が不意に名前を呼び止める。

「……、…兄弟、いたんだな」
「うん」
「そうか…ーーー」

会話が再び止まると遊作は困ったように眉をしかめ、しばらくの沈黙の後に言葉を絞り出した。
「…、…、…喉、乾かないか」
「え…?うん、まぁ…。でも、我慢出来ない程では…」
「知り合いが店をしているから、…その、何か…奢らせてくれないか」
「…」

歌のお礼という事だろうか。
名前は見返りが欲しくて遊作を誘っているわけでは無かったし、寝落ちする事だって本当に気にしていないのだが、何やら向こうは必死の形相に見える。

何をそんなに切羽詰まっているのかは分からないが、断るのもまた気を遣わせる気がして『分かった』と答えた。

「名字、…さん、はホットドックとか食べるのか…?」
「うん、嫌いじゃないよ…後、呼び捨てで良い」

呼びにくそうな事この上なさそうなのでそう伝えると『そう、か』とやや安堵した表情を見せた。『さん』付けで呼ぶのも、きっと同級生に奢るなんて事も、本来の彼のペースでは無いのだろう。

「(…何か、用があるから…?)」

特に遊作と自分の間に問題があったようには思わなかったが。

何かあるならここで聞けばいいのにとは思ったが、当の本人は道案内をしてくれる気で荷物をまとめ始めていた…---。



【君に近づく―前編―】


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しかしこの遊作、寝過ぎである。
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