第1章 VRAINS
1つ、名字からハノイの気配を感じる時は波があり、至近距離じゃないと分からなかった。
2つ、名字はリンクヴレインズに行くと記憶が曖昧になり、ログイン後のログは全て消えている。
3つ、名字のデュエルディスクはカード収納型の旧式。ネットワークからの侵入は容易い。
* * *
「…なるほどな。それで遊作はその名字がハノイの踏み台にされてるんじゃないかと考えた訳か」
「あぁ」
「でも今日は来なかったんだな?誘ったんだろ?」
「…色々あって帰った」
時を遡る事、しばらく前。
3つの考察に至った遊作は名前に提案した。
「名字。名字のリンクヴレインズの不調はデュエルディスクに原因があるかもしれない」
「そう、なの…?」
「リンクヴレインズの性質上、合わないデュエリストがいるのはザラだが…ログまで消えるのはおかしい」
デュエルしに行った人間なら、せめてデュエルの申し込みをした経緯は記録されている筈だ。
それすらないと言うのは不自然だった。
「…これは、兄さんの物だから…あまり細かな設定は分からないけど」
「…俺は、少し知識がある。少し見せてくれないか」
少し躊躇する素振りを見せた名前だったが、この場で返す事を伝えるとおずおずとデュエルディスクを渡そうとした。
ーーーのだが。
『危機を感知、ただちにこの場から離れて下さい。繰り返します…』
「「っ!?」」
ビィイビィイーー!!というけたたましい音と共に警告案内が鳴り響いた。
ほぼ最大音量のエマージェンシーコールに周りもざわつき始めたので、仕方なくその場で2人は解散したのだった。
「そりゃ残念だったな」
「…だがこれで、もし本当にハノイが関わっているなら…動きが変わるかも知れない」
様子を見るしか出来ないのはもどかしいが仕方ない。
遊作はクラスメイトを案じながらホットドッグを口に押し込めたのだった…ーーー。
【君に近づく―後編―】
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このシリーズ、連載物に移そうかと思います。