第1章 VRAINS
名字名前はどちらかと言えば、クラスで浮いているような生徒だった。
良くしゃべる訳でもなく、表情もあまり変わらない。
特に群れたりもしようとしない為、女子からは若干敬遠されているようだった。
そんな彼女からハノイの気配を感じたのは授業の終わった時。
すれ違い様、至近距離になった時だった。
本当に分かるか分からないかの微かなものだったが、気になって距離を置きながら尾行をすると音楽室に入っていく。
「(特にログインしたりする設備はない筈だが)」
外から少し様子を伺っていると、彼女の声が聞こえてきた。
「~♪~~♪♪~」
「…」
表現力がある、とでも言うのだろうか。
扉のガラスから見える彼女の表情は大きく変わっている訳では無いが、それでも歌声には豊かな感情があるように思えた。
先程感じたハノイの気配も今や感じられなくなってしまった。
距離の問題なのか、検証しようと音楽室の扉を思い切って開ける。
「聞いていても良いか」
「…どうぞ」
少し驚いたのか、一瞬目を見開いた彼女だったが程なくいつも通りの表情に戻り,そう答えた。そして歌声がまた教室に溶け始める。
「♪~♪~、♪~♪~」
「(…これ、は…)」
響く歌声を聞いていると、次第に瞼が重くなってくる。
ここ最近はハノイとのデュエルで夜型生活にシフトしていたからだろうと推測はできるのだが。
「(―――ハノイの気配を前に、こんな…)」
それだけ彼女の歌にリラックス効果があるという事なのか、もうそろそろ意識は限界に近い。
…必死に耐えようとはするものの、気付かない間に俺は眠りについていた。
* * *
「---…で、クラスメイトの歌聞いてたら、うっかり寝落ちたと」
「すまない、草薙さん…」
「いや、次の約束も取り付けてんなら手がかりが消えたわけじゃない。寧ろ繋がりが出来て御の字だろ?それより、お前も疲れてるって事がよく分かったろ。たまには休め!」
「ああ、次は気を付ける…」
【子守唄を君に~side Y~】
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VRAINSでタッグフォース出して欲しい今日この頃。