【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第8章 DAY4【カイル・アッシュ】
しばらくしてゆっくり目を開けると
「……お前、パンくずびっしりだったぞ」
ニヤリと笑うカイルに段々恥ずかしさがこみ上げた。
「ちょ、ちょっと……」
「あー、なんだよ」
カイルは拭い取った指を舐めとると勝ち誇ったようにせせら笑った。
レイアが妙な勘違いをしてしまったことは分かっていないらしい。
(もう……その気がないの分かってるけど距離近すぎるよ……)
顔を赤くしてふくれっ面のままそっぽを向くと、カイルがぽん、と頭を撫でる。
「ほーら拗ねんなって。この後はお前の行きたいとこ付き合ってやっからよー」
カイルはそんなに歳が変わらないはずなのに
妙に大人びた顔つきをする。
それは
命の儚さや尊さに
ずっとずっと向き合ってきたからなのかもしれない。
気だるそうな、乾いたフラットなテンションは
命と向き合うための武器であり
最上級の優しさなのかもしれない。
カイルが抱えているものの大きさを想像すると
切なさがこみ上げて、胸の奥がぎゅっとなった。
「カイルは……行きたいところないの?」
「あ?俺?」
面食らった顔でカイルが瞳を瞬く。
「カイルはいつも仕事かお酒ばっかりだけど…他に好きなことや興味のあることないの?」
「んー、急に言われてもなぁ」
カイルは頭をかきながら空を仰ぐ。
そして自嘲気味の笑いを一つこぼした。
「医者ってのはよ……他に好きなもん作っちまうと仕事が疎かになっちまいそうでなー…ついそういうモン作ることから逃げちまうんだ」
「そっか……大変だもんね」
(それにカイルって飛び級するくらい頭がいいんだよね……可愛い雑貨や洋服とかも興味なさそうだし)
行き先の提案に迷っていると、カイルの方が口を開いた。
「そうだ、一つ思いついた。お前がどこでもいいってんなら今からそこ付き合えー」
「え?どこ行くの?」
「いいから…早く食っちまえよー」
カイルはライムシードルを飲み干すと、さっさと立ち上がってしまう。
「え、ちょっと待ってよ…!」
レイアは残りのサンドイッチを頬張ると、慌ててカイルの後を追った。
……今度はちゃんと口の周りを拭って。