【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第8章 DAY4【カイル・アッシュ】
カイルがレイアを連れてやってきたのは、セントラル地区にある博物館だった。
そこには、クレイドルの歴史や赤と黒の軍の歴史、動植物の生態や地質学、天文学などあらゆる分野の資料が並んでいた。
「カイルの来たかったところってここなの?」
「んー、まあな」
様々な動物の模型や資料が並ぶ通路をゆっくり歩きながら、カイルは答えた。
「お!このイタチの剥製、まだあったのかー懐かしいなー!!なぁレイア、ここ見てみろよー」
「え?何?」
カイルが指差すイタチの剥製の足元、イタチの足の爪がひとつだけ剥がれている。
「これ、俺が子どもの頃やっちまったんだよ」
「えぇっ?!カイルが壊したの?!」
「おい!人聞きの悪い表現すんなよ…」
カイルが軽くレイアの過多を小突く。
「……子どもの頃、ほぼ毎日のように親父に連れてきてもらってた。ここにある殆どのモンは覚えてたなー」
「そうなの?こんなに沢山の資料?」
「ああ……医療とは関係ないモンばっかだけどなー」
カイルの眼差しは懐かしげに細められ、童心に帰ったように微笑んでいる。
(なんか初めて見るなぁ、カイルのこんな顔)
胸の奥が温かくなり、ついカイルの横顔に見とれてしまう。
「あーちょっとこっち来てみろよー、懐かしいなぁ…海の生き物のコーナーだ。俺ここ大好きだったんだよなぁ」
砂が敷き詰められ水が張ってある水槽に、様々な生き物のレプリカが飾ってある。
「赤の領地には海がねーからな…ここは面白くてたまんなかったぜー……そういえば」
カイルは水槽から視線を外し、隣にいるレイアを覗き込んだ。
「お前が元いた世界にも博物館ってあったのか?」
「うん、あったよ。大英博物館っていう大きなのがあって…美術品とか、昔の王宮や貴族の調度品なんかも飾ってあったかなぁ」
「へぇ…それも面白そうだなー」
カイルは目を輝かせて笑った。
(ほんと…今日は普段見せない顔ばかり…)
そんなカイルの表情にどぎまぎしていると
大きな手のひらが急に近づいてきた。
「えっ?」
カイルの手がレイアの額に当てられる。
「お前、顔赤いけど大丈夫かー?」
「えっ?そ、そんなことないって……大丈夫」
怪訝そうな顔をして次の展示へ向かうカイルの背中を目で追いながら、レイアはため息をついた。