【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第14章 DAY7【シリウス・オズワルド】
(まともに顔を合わせたのって…ヨナとの喧嘩の原因になった兵舎訪問の時……か…)
記憶はおぼろげになっているが
酔ってしまったシリウスとセスさんとの『夜』は、忘れたくても忘れられない。
記憶を呼び覚ましていたのを汲み取るかのように、シリウスが切り出す。
「……あの時は、悪かったな」
「え……」
「傷つけるつもりはなかったんだがな。何を言っても言い訳になっちまう。簡単に償えるもんでもねえし」
「シリウスさん、私、あのことで傷ついたりはしてません」
「え…」
シリウスの瞳をまっすぐ受け止める。
「あの後確かに、それがきっかけでヨナと喧嘩して傷ついたり傷つけたりはしました…でも……シリウスさんが私を傷つけたわけじゃないです」
「……優しいんだな、あんた」
誰にもまねできないような、大人の笑みをこぼしてシリウスが答える。
「それでも……お嬢ちゃんにやっていいことじゃなかったはずだ。すまなかったな…」
「シリウスさん……」
少ししんみりした空気が流れてしまう。
「……そろそろ行くか」
そしてまた今夜、同じようにシリウスに抱かれる。
シリウスはそのことをどう思っているのだろうか。
罪悪感にまみれ、苦しみながら……なのだろうか。
それはそれで少し悲しい。
このあり得ない非常識な状況の中で、シリウスさんに傷ついてもらいたくない。
レイアの心の中には、そんな思いがこみ上げてきていた。
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「………シリウスさん!」
言い出すタイミングを見計らううちに馬車の中まできてしまった。
「ん?どうした?」
揺れる馬車の中、シリウスの声が優しく響く。
「あ、その……今夜のことなんですが」
(なんか改まって言うのも変だけど…言うしかない!)
「?」
「……私、シリウスさんに傷つけられたりしないので…!だから……シリウスさんも、傷つかないで欲しいです」
「………」
一瞬目を見開き、おかしそうにふっと笑う。
「……面白いこと言うな、あんた」
「え……」
すると、大きなシリウスの手がレイアの頭を包み込むように撫でた。
「……今日は、お嬢ちゃんのしたいようにしな。全部あんたのペースに任せる。いいか?」
それがシリウスの最大限の優しさだということは、容易に伝わってきたのだった。