【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第8章 DAY4【カイル・アッシュ】
「冥土の土産が決まらないのよ」
「何にもいらねぇだろー、金目のモンは全部置いてけよー?」
よく見ると二人はニコニコしながら喋っていて、いつもこんな調子なのだと伺い知ることができる。
「あら、カイル先生今日は恋人と一緒なの?」
「あー、こいつは助手なんだ。うちの美人上司の婚約者」
「まぁそうなの!クレメンスのご長男のお嫁さんなのねぇ」
品のいい笑みが向けられ、レイアは反射的に会釈をする。
「はじめまして、レイアと言います」
「アンナ・ゴールウィンです。よろしく」
アンナに座るよう勧められ、二人は同じテーブルを囲む。
「どうだ、気分は」
「まぁまぁよ。良くもないけど悪くもないの。毎日こうならいいんだけど」
「ん……とりあえず出してる薬を飲んでおけば痛みだけは抑えられるからな。効かなくなってきたら教えてくれ」
「ええ、ありがとう」
話をしながらカイルは、アンナの顔色や目の色、口の中を手早く診ていく。
最後に脈を測り終えると
「当分死なねーな。安心しとけ」
にやりと笑ってアンナの骨ばった手にぽん、と手を重ねた。
「あらそうなの?私のお役目は随分長いのねぇ」
「そんだけまだやることが残ってるってことだな……またいつでも呼べよー」
カイルが立ち上がるとアンナは名残惜しそうに引き止める。
「あらカイル先生もう行っちゃうの?せめてお茶くらい…」
「わりぃなー、今日こいつとデートしなきゃなんねーんだよ」
「え?デート?クレメンス家のフィアンセと??」
事情を知らないアンナに教えることもできずカイルはうーん、と考え込んだ。
「カイル、私は別に構わないよ?」
「ほら、そうと決まればお茶の用意をさせるわね!先生にはいつも通りミントティーを用意するから!」
アンナは控えていた使用人に合図を送り嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「カイル先生、また二日酔いなんでしょう?二日酔いの時にはミントティーがすっきりするのよ」
アンナには何もかもお見通しらしい。
こうしてレイアとカイルはアンナとお茶とお喋りをたっぷりと楽しんで帰路についた。
セントラル地区に戻ってきた二人は、屋台でクロワッサンサンドを買い、そのまま公園の芝生に座ってランチにすることにした。
「あーやっと食欲が出てきた」