【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第8章 DAY4【カイル・アッシュ】
カイルの話によると、今日の往診は3件で
一人目が妊婦さん、二人目が両足を骨折した大工さん、三人目が老婦人なのだという。
お腹の大きな奥さんは
お腹の子が5人目のお子さんで、4人の兄弟たちは家の中を走り回ったり庭を駆け回ったりしてかなり怒られていた。
「まぁそうカリカリすんなー?あんまり怒るとお腹に障るぞー?」
「そうは言ってもカイル先生、うちの子たちは本当に言う事聞かなくて……」
かなり大きくなったお腹をさすりながら、奥さんは苦笑いをしていた。
「おいお前らー、ちゃんと母ちゃんの言う事聞かねぇと、一番太い注射打つからなー」
「やっべー!逃げろー!!」
笑いながら子どもたちは走っていく。
カイルは気を取り直して奥さんに向き合う。
「胎児の心拍は全く問題ねー。動きが少し鈍くなってんのは臨月だからだ。あと2週間……予定日頃には生まれるだろうな。心配すんなー」
奥さんはほっとしたように柔らかい笑みを浮かべてカイルに頭を下げ礼を言った。
その妊婦さんの数件先にある大工さんの家で骨折の経過観察をした後、カイルは再び馬車を呼んでレイアと共に乗り込んだ。
「次の家は少し離れてんだ」
「赤の領地なの?」
「まぁな」
馬車は赤の領地の中でも上流階級の人たちが暮らす地区へ向かっている。
「カイルは定期的にこうやって往診もしてるの?」
「ん?ああ……黒の領地もたまに行くぞ」
「そうなんだ……分け隔てないんだね」
「患者に赤も黒もねぇからなー」
(カイルらしい答えだな…)
すっかり血色の良くなった横顔を見て、レイアは安堵の息をつく。
「お、そろそろ着くぞー」
馬車はかなり大きな屋敷の門をくぐり、エントランス前で止まった。
屋敷の使用人らしき人が馬車のドアを開けてエスコートしてくれる。
「カイル先生、奥様がお待ちです」
「おー、今行く」
カイルは特段慌てた様子もなく、荷物を使用人に預けててくてくと中へ歩いていった。
お城のような豪奢な屋敷に気圧されながら、レイアはおずおずとカイルの後をついていくのだった。
きれいに手入れされた中庭に到着すると
東屋に老婦人が座っていた。
「よぉ、ばーさん、まだ生きてたかー」
「ちょ、カイル!」
レイアは慌てるが老婦人は笑っている。