【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第14章 DAY7【シリウス・オズワルド】
「シリウスさんって、ほんとに何でも知ってるんですね!」
店の奥でお昼休憩を取りながらレイアは感心したように言った。
「そうか?花屋ならこれくらいは普通だぞ」
「だってシリウスさんは黒の軍のクイーンじゃないですか」
「まぁ、そうだな…今は」
苦笑いを浮かべ、ブラックコーヒーを飲む。
「元々、継ぐつもりだったんだがな」
遠くを見つめるように、シリウスがぽつりと呟く。
「そうだったんですか?」
「あぁ。こう見えて長男だしな…入隊する前はよく店を手伝ってた」
シリウス特製サンドウィッチを食べながら、レイアは黙って話を聞く。
「大切な人を守りたい、道を踏み外した時に助けたい、そのためには…花屋じゃダメだ、そう思っちまったんだ」
「大切な人、ですか」
「あぁ……家族や、黒の軍の仲間たちもそうだが……昔からの『親友』とか、な」
人がいなくなった店内に、柔らかな風が入り、花たちをそっと揺らす。
「……今でも、花屋さんに戻りたいって思うこと、あるんですか?」
恐る恐る尋ねるレイアに、シリウスは目を見開いて驚いたが、すぐ笑みをこぼす。
「それはねぇよ、お嬢ちゃん。俺の居場所はもう…あの場所以外あり得ねぇ。あそこにいねぇと……悪ガキ共の交通整理、誰がやるんだ?」
「確かに……」
レイアは笑みをこぼす。
「ただでさえ今日一日空けてるのが心配で仕方ねぇ」
「ふふっ……どこに行ってもシリウスさんはお兄ちゃんですね」
「年寄り扱いしないのはあんただけだな…ありがとよ」
頭を撫でるシリウスの手は大きくて温かかった。
「さて、午後は少し忙しいぞ?裏にある花を配達しなけりゃならねぇからな」
「配達、ですか?」
食事を終え、店の裏へ行くと沢山の鉢植えがズラリと並んでいる。
観葉植物から花まで種類も様々だ。
「もうすぐ荷馬車が来る。そいつにこれを全部積んで、注文先へ運ぶ」
「こ、これ…全部ですか?」
「当たり前だ」
膨大な量にレイアは気圧されてしまう。
「なぁに、午後は一人助っ人を頼んでるから安心しろ」
「助っ人……?」
「もうすぐ来る」
馬車が近づく音が聞こえ、シリウスは表の通りへと向かった。
「よぉ、こっちだ」
慌ててレイアも後を追うと、馬車に乗ってきたのは良く知る人物だった。