【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第14章 DAY7【シリウス・オズワルド】
「あー…お兄ちゃん、ごめんねー」
シリウスに似た顔立ちの美人さんが現れる。
「いや、大丈夫だ。ちょうど非番だったし…ほら、助っ人も連れてきた」
妹さんの視線がレイアに向けられる。
「は、はじめまして…レイアです」
「はじめまして!兄がいつもお世話になっています!もしかして兄とのデートの約束、邪魔しちゃいましたよね…すみません!」
「えっ?!」
「こら、お前まで変なこと言うな。この人は俺の彼女じゃねぇからな」
「え?そうなの?」
シリウスは妹の頭をくしゃっと撫でると、店内の花を見て回る。
「これ、今日の分か?」
「うん。今朝仕入れた分はもうセットしてあるの。午後の配達分がまだ裏にあるんだ」
「了解……じゃあお前、もうばあさんの付き添い行っていいぞ」
「ありがと!じゃあお願いします」
妹さんはレイアに軽く会釈をして奥へ戻っていった。
「さて、開店準備するか」
「…はい!」
腕まくりをするシリウスに、レイアも気合を入れて返事をした。
花屋の仕事というのは、扱う商品の華やかさとは裏腹に地味でキツい仕事だ。
水は冷たいし、手早く作業をしなくては花が傷んでしまう。
水の入ったバケツは重たいし、鉢植えも重たい。
つまり、かなりの重労働だ。
シリウスは比較的楽な仕事を振ってくれたが、それでもかなり大変ではあった。
シリウスの実家の花屋は黒の領地の中でも評判の店で、朝から多くの客が訪れた。
土地柄か、庭で花を植えて楽しんだり野菜を育てたりする領民が多く、そういった相談も後を絶たない。
「すみません、この花に合う肥料はどれですか?」
「えっ?あ、えっと…少々お待ちくださ……」
「その花にはこちらがいいですよ」
接客に戸惑っていると、うまい具合にシリウスが助け舟をくれる。
「お嬢ちゃん、代わりにこっちの花束頼めるか」
「はいっ」
包みかけの花束を仕上げお客さんに渡していると、シリウスは別のお客さんと話し込んでいる。
「今時期は植え替えはしない方がいい。鉢のまま、できれば東側に置いて……」
「それはあまり水をやりすぎない方がいいですよ」
「地植えするならこれと一緒がいい」
普段、軍に関する膨大な仕事をこなしているというのに、それでもなおここまでの花の知識があるなんて。
思わず感心してしまう。