第1章 出会いとそれと
「え、…あえ、」
俺は、突如として現れたそれの姿を、まじまじと見やった
肩までのふわりと軽そうな黒髪と、赤色の二つ目
この山中じゃ明らかに動きづらそうな、浴衣みたいな薄い生地の服
何よりも目を引いたのは、頭からぴょこんと飛び出た、焦げ茶色の…そう、まるで
「犬…の耳?」
「!!?」
そう俺が呟いた言葉に身体をこわばらせ明らかに警戒する姿勢をとった、一見すれば俺と同年代であろう、女の子。
頭にはやはり犬とおぼしき動物の耳が生えていて、犬耳と言えばというべきかそわそわと振れている焦げ茶色の尻尾も確認出来た
……
……そして、
「……いや、あの俺別に何かしたりしないから。
そんな構えなくていい…」
「へ……っ?あっ…はい……」
俺がそう告げれば、意外にもおずおずと身体の硬直を綻ばせる女の子。垂れ下がった獣の耳が安堵したと伝えてくる
……何と言うべきか。
見た目とかここにいる経緯とか考えてみてもあまりに不審すぎるとか。
物の怪の類に出くわしちまったんなら早く逃げないとまずいとか、
思うところは色々あるにしろ
俺がまず、第一に直感したことは、
「……っ、か、…
……かわ、いい」
「え、えっ…?!」
そう、端的に本心から述べるとすればこれに尽きる。
中学二年生、思春期真っ盛りの俺のビジョンに映るその子の姿は
はっきり言ってめちゃくちゃ可愛かった。