第1章 出会いとそれと
「式神を召喚させるぅ?」
「監督からの指示だ、霧隠。」
「…そんなもの、サッカーと何の関係があるっていうんだよ。」
「式神を呼び寄せるために必要不可欠なのは契約、と呼ばれるもの。
だが、式神と契約を交わすことは非常に難解な事らしい。
故にこれも鍛錬に通ずるという監督の見通しだろう。」
「へっ、それっぽい事抜かして、結局練習にかこつけてただいつも通り忍術の修行させるだけじゃないか。」
「……異論は認めない。再三言うが監督の指示だ。」
「はっ、指示も命令もしったこっちゃないね。
メンバーは風魔、お前に任せる。じゃーな」
「待て霧隠!何処へ行くつもりだ。」
「監督には上手いこと言っといてくれよ、ちょっと出かけてくる。
…ったく、もういい加減、忍術ばかりの修行続きでうんざりなんだ。たまには気分転換ぐらいしたって罰は当たらないだろ」
「修行を怠ればその分試合に影響してくるんだぞ、分かっているのか霧がく…っ!
…、逃げたか……」
煙の立ちこめる周囲の光景を眉を顰めて見やり、風魔は諦めたようにため息をついた。
しかしすぐに、やむなくチームメイト達のいるグラウンドへと向き直り足を急がせるのだった。
「…さーて、とっ
…計画なしに出てきちまったけど、何処行こうかなぁ。」
と、そんな風魔の心情はいざ知らず、
風がそよがせる自身の髪を指でくるくると弄りながら霧隠は当てなく山奥へと歩を進めていった。